対策は極めてシンプルだ。参加者に「話を振ればいい」のである。
Aさんからこんな質問が出ましたが、Bさんどう思いますか?
Aさんの意見は確かにそうですよね。Bさんは反対ですか?
Aさんの疑問はごもっともですね。でも私が答えるより、Bさんに答えてもらった方がいいですね
ファシリテーターが引き出して、別の参加者にぶつける。たったこれだけだ。これができると、全員の議論が活性化された状態が作れる。簡単なことだが、できない人は案外多い。
例を挙げてみよう。
参加者:会議の進め方を変えた方がよいと思うけど?
ファシリテーター:私としては○○○と考えていて……
このように、参加者からの意見にファシリテーターが自ら答えていないだろうか。これでは対話は促進できない。そうではなく、
ファシリテーター:進め方を変えた方が良いと、Aさんから意見が出ていますが、Bさんどう思いますか?
という感じで、他の参加者に振るのだ。会議はファシリテーターだけで作るものではない。参加している全員で作るものだ。だから、ファシリテーターが答える必要はない。むしろ、答えずに別の参加者に振った方がいい。
これができると、参加者同士の対話がグッと活性化する。自分たちが会議の当事者であるという意識もついてくる。対話ができているので、結論にも納得感が生まれるというわけだ。
今回解説している「引き出し、対話を促す」を実行するときには、留意してもらいたいポイントがある。「合意形成の氷山モデル」を意識することだ。これは「会議ファシリテーションの極意」といってもいい。
氷山の上に見えているのは「意見やアイデア」である。ただし、霧がかかって見えづらいことも多いので、基本動作6で解説したように「具体的には?」という質問で、霧を晴らしていく。
氷山の下は「経験や価値感」などである。意見やアイデアには、そう考える経験、価値観が根っこにある。こちらは「なぜそう思うんですか?」と理解を深める質問をして、ひもといていく。
そうして明らかにした氷山の全体を「話を振る」ことによって他者にぶつけていくのだ。これによって、個々に浮遊していた氷山が健全にぶつかり合い、合意形成ができていく。
このメカニズムが分かっていると、断然議論がさばきやすくなる。ぜひ覚えてもらいたい。
コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
議論に集中できない、参加者が内職や居眠りをしている――。そんな“ダメ会議”からどうすれば脱却できるのか。会議の生産性を高めるポイントを、榊巻亮さんの著書『世界で一番やさしい会議の教科書』と『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』から紹介します。
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