同じような社長ミーティングでも、gCストーリーはまた、全然違った雰囲気で行っている。
対象は新入社員が中心。毎月1回、オフィスで社長との対話の場を設けている。そこで語られるのは、「仕事の話」というより「人生の話」らしい。「どんなふうに生きたい?」「どんな人生を送りたい?」「それって、gCストーリーはどうやったら応援できるのかな?」という感じらしい。
その他の変わった取り組みとして、gCストーリーでは、「両親参加の内定式」というのも行っているということだ。理念の共感は両親から――ということなのだろうか。
筆者が所属するケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズはどうしているかというと、ミッション、ビジョン、行動規範に加えて、日々の意思決定で大事にするべき「6カテゴリー、37項目の経営方針」が明文化されている。
これを見れば、「何をよりどころにして意思決定し、どこに向かっているのか」が分かる。その結果、「どんな会社を目指そうとしているのか」が分かるようにしているのだ。
マルケトは、社内報に力を入れている。「自分たちは何者で、何を目指しているのか」や、最近のトピック、お客さんの声などを載せて全社員に配る。
社員はこれを持ち帰り、家庭でも見せる。「うちの会社ってこんな感じでさ、こういうことを目指して仕事しているんだよ」なんて会話がなされるのだという。人に語る、教えるという行為は最も身になるので、話しているうちに、会社の経営方針やビジョンが腑に落ちる、というわけだ。
5社の施策を取り組みを見ると、目指す状態が同じでも、取り組み方は各社それぞれで異なることが分かる。
これらを受け、筆者は、「ウチの会社はどうなんだろう?」を自問自答してみた。ケンブリッジでは、経営方針の“見える化”は行ってきた。だが、各社の動きと比べて、共感してもらうための工夫が少し足りないように思えてきた。
ケンブリッジの社員が30〜40人だった頃には、経営陣との対話は活発で、特に何もしなくても自然と思いが伝わっていた。しかし、社員が100人を超えてくると、意図的に対話を仕掛けていかないと「経営理念が伝播・共感された状態を保つ」ことは難しいと実感した。
そこで、ケンブリッジでは、「社長との座談会『カエルBar』」を実施することにした。freeeの取り組みをまねたものだが、テーマは決めず、その時の参加者が抱えている疑問や質問を中心にフリートークをしていく形を採用した。加えて、年次に応じて定期枠を設けて、社員には半強制的に参加してもらうようにしている。
社外のスナックを借り切るのではなく、社内のBarスペースを利用し、そこで“ゆるゆると”やるスタイルにした。社内なので、他の社員も飛び入り参加できる。このやり方で、ケンブリッジらしいやり方ができたのではないかと思っている。
このような感じで、「自社では経営理念が伝播・共感された状態を保てているか?」と自問してみるといい。自問した結果、取り組みが十分ならそれでいいし、不足しているなら、「何が不足しているのか」「自社に合った補強の仕方はなにか」を考えてみるのだ。
ケンブリッジに、もし経営方針書がなかったら、社長との座談会「カエルBar」ではなく、経営方針書の作成を優先させたと思う。
あなたの会社ではどうだろうか? どんな状態で、何が不足しているだろうか?
自社の状況を客観的に見つめるために、自問自答リストを作ってみた。考えるきっかけになれば幸いだ。
コンサルティング会社、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
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