ヒトオシ
インタビュー
» 2019年07月12日 08時00分 公開

成長痛をどう乗り越えるか:企業を崩壊させかねない「組織急拡大の壁」問題、Sansanはどうやって乗り越えたのか (1/4)

社員の増加に伴って、企業の文化や理念が社員に伝わりにくくなり、いつしか社内がバラバラの方向を向いた統合性のない組織になってしまう――。そんな「組織拡大の壁」問題をSansanはどうやって乗り越えたのか。

[やつづかえり,ITmedia]

 企業が「存続の危機」にさらされる時――それは何も、販売不振や放漫経営といったマイナス要因だけが理由ではない。「急激な事業の成長や合併などに伴って社員が増える」といった、一見、企業にとってプラスに思える要因が、思わぬ危機につながることもある。

 その一つが、「組織拡大の壁」問題だ。社員の増加に伴って、企業の文化や理念が社員に伝わりにくくなり、いつしか社内がバラバラの方向を向いた統合性のない組織になってしまう――。そんな企業の例は枚挙にいとまがない。いわゆる、100人の壁、200人の壁、と呼ばれる現象だ。

 こうした“めまぐるしい組織のフェーズの変化”において、今、自分たちが目指している方向が経営理念から外れていないか、自分たちにとって意義のあるものなのか――。全ての社員が同じ方向に向かえるよう、経営理念の見直しと浸透を徹底している企業がある。クラウド名刺管理サービスで知られるSansanだ。

 Sansanは2018年12月に全社員による議論を経て、企業理念に当たるミッションとバリューズを変更している。同社はなぜ、理念を見直す必要があったのか、理念の変更が会社と社員にどのような影響を及ぼし始めているのか――。同社CHRO(Chief Human Resource Officer)の大間祐太氏に聞いた。

Photo Sansan CHRO(Chief Human Resource Officer)の大間祐太氏

創業以来10回以上の改定を繰り返してきた「Sansanのカタチ」

 Sansanが企業理念を見直したのは、今回が初めてではない。2007年の会社設立時、創業メンバーが「これから作りたい会社の在り方」を考え、まとめたのが「Sansanのカタチ」という文書。それ以来「Sansanのカタチ」はことあるごとに見直され、マイナーバージョンアップも含めて10回以上の変更が加えられてきた。

【2007年6月創業時の「カタチ」(当時の社名は三三)】

I.使命

「名刺データベースの三三」として、企業とそこに働く個々人に対して、新たな価値の創造と生産性向上に資する情報サービスを提供し、21世紀の日本の未来づくりに貢献する。

II.姿勢

1.仕事に燃え、情熱と愛情を注ぐ

2.よく考え、すぐ動き、形にする

3.感謝と感激を大切にする

4.逃げずに、フェアに、誠実に

5.どろくさく、泥臭く、どろくさく

III.サービスの原則

1.新たな価値を提供し続けること

2.利便性とセキュリティを両立させること

3.分かりやすくあること


 創業当時の「カタチ」は、「使命」の文章が長めだ。それが2012年に「Mission」と呼び名を変え、「ビジネスの出会いを資産に変え、新たな価値を生み出す」というシンプルなものに変わる。そこには、Sansanという会社のことを世の中に分かりやすく発信しようという意図があった。

【2012年9月時点の「カタチ」】

Mission

ビジネスの出会いを資産に変え、新たな価値を生み出す

Vision

世界を変える新たな価値を生み出す

Values

仕事に燃え、情熱と愛情を注ぐ

強みを活かす

考え、動き、形にする

やるべきことをやる

意思と意図をもって判断する

感謝と感激を大切にする

逃げずにやり切る


 「当時は、当社の名刺管理サービスの契約件数が1000件ほどになり、徐々に注目されるようになってきた頃です。サービスだけでなく会社のブランディングにも力を入れるべく、初めて広報室を立ち上げたタイミングでした。それまでの『使命』に、より『世の中に提供すべき価値』という意味合いを含んだ、責任を伴うものとして『ミッション』と呼称を変え、よりシンプルな表現に変更したのです」(大間さん)

 このとき、同社は70人ほどいた全社員を巻き込んで「カタチ議論」という検討会を実施。企業理念のフレームワークとして一般的なミッション・ビジョン・バリューに当てはめて「Sansanのカタチ」を再考したという。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.