「新卒を採用しても8割が辞めてしまう会社」から、「新卒入社後3年目までの離職率がゼロの会社」へ――。人材不足という大きな危機に正面から向き合い、粘り強く改革を続けた結果、若手が生き生きと働ける会社へと変貌を遂げたのが、後払い決済サービス大手のネットプロテクションズだ。
そんな同社が2018年度、「人事制度」と「オフィス環境」という、社員の働き方に大きく影響する2つの要素を抜本的にリニューアルした。それぞれのプロジェクトは別の担当者が主導し、特に内容をすり合わせたわけではないが、出来上がってみると、新たな人事制度と新オフィスのコンセプトは“怖いくらいにリンクしていた”という。
同社の新たな人事制度とはどのようなものなのか。また、働き方を変えるオフィス環境とはどのようなものなのか、同社は何を目指して新たな改革を踏み出そうとしているのか――。執行役員で人事を担当する秋山瞬さんと、オフィス移転プロジェクトリーダーの赤木俊介さん(atoneアトネグループ)に聞いた。
前述の通り、ネットプロテクションズは今や非常に離職率が低い。ここ5年ほど毎年10〜20数人の新卒採用を行ってきた結果、正社員約130人の半数を新卒入社1〜3年目の若手が占めるようになった。
組織が若返って活気が生まれるのは願ってもないことだったが、だからこその問題も起きた。マネジメントを担う人員が足りなくなったのだ。経験の浅い若手を起用するものの、やはり急にはうまくいかない。特に「人を評価する」という点で課題を抱える新任マネジャーが多かったという。
このような場合、一般的な会社であれば、新任マネジャーやその候補として選抜した一部の社員の育成を強化しようとするだろう。ところがネットプロテクションズは、「マネジャーという役割を解体する」という方向に舵をきった。
秋山さんによると、この発想転換のベースにあるのは「自律・分散・協調」によって成り立つ組織像だ。上司が指示・命令や保護を与え、部下が従い依存する、という上下関係をなくし、自律的な個人同士が助け合い、協力し合うようなイメージだろうか。
今後、マネジャーの役割の一部はチームメンバーが合議で選出する「カタリスト」と呼ばれる人が担当するが、その責任の範囲はかなり絞り込む。社員個人のセンシティブな情報や資金の采配という役割に限り、それ以外の機能はみんなで担い、特定のメンバーに負担が偏らないようにしようとしているのだ。
同時に、「評価」という活動の意味付けと手法も大きく見直した。これまでは目標管理制度(MBO:Management by Objectives)の下、「報酬を公正に配分するための評価」という側面が強かったが、新人事制度では評価は「成長支援」のためとし、毎月行う1on1を一人の上司ではなく、複数のメンバーが担当することにした。これにより、多くの社員が早いうちから評価やアドバイスをする側に立つ機会を持ち、マネジメント力を底上げすることを狙っている。
2018年の春から運用してみて、初めて評価者の立場に立ったメンバーが「思っていたより難しいものだ」と実感したり、その難しさを経験をした上で被評価者の側に立つとアドバイスの受け取り方も変わる、といった効果が出てきているという。
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