人手は不足する一方なのに、仕事でこれまで以上の成果を求められる――。少子高齢化に伴う人手不足が深刻化する中、このような問題に直面している企業は少なくない。
この課題を「気合や根性で乗り切る」ような力業で解決しようとするとブラック企業の烙印を押されかねないし、何より、“働き方改革”が叫ばれている今の風潮にそぐわない。かといって、これから急激に労働人口が増えるという見込みもない日本では、「今いる人材の質を底上げ」せざるを得ない。
しかし、単にトレーニングや教育を施すだけで営業マンのスキルが一気に向上するのなら、誰も苦労はしない。実際にはトレーニングや実戦経験をいくら積み上げても、なかなか人材が育たずに苦労している企業が多いのではないだろうか。
そんな中、独自の方法論による「強い営業組織作り」を提唱するのが、Value marketの代表取締役を務める内田裕希氏だ。新卒で入社した楽天で営業職に就いていた同氏は、楽天を卒業し、独立してエンジニア向けエージェントサービスを運営するようになった今日でも、楽天での営業現場やマネジメントの経験をベースに独自のマネジメント理論を構築し、さまざまな企業に対してマネジメントのコンサルティングサービスを提供している。
こう聞くと、さぞや楽天で大活躍していたのかと思うかもしれないが、実は当初は営業マンとしては落ちこぼれ同然で、そこから泥くさく試行錯誤を重ねる中で、独自のノウハウを蓄積していったという。さらに、マネジャーに昇進した後は、新人を中心に構成されたほとんど結果が出せなかったチームを、1年で社内成績トップにまで押し上げた実績もあるという。
1年で“低迷するチーム”を、“自走するチーム”に変える方法とは一体、どのようなものなのか――。志と覚悟があれば、“明日からすぐ、誰でも実践できる”という人材育成法について内田氏に聞いた。
「あの頃は、本当に追い込まれていました。結果を出すか、それとも会社を辞めるか。この二者択一しか残されていない状況でした」――。新人営業時代のことを、内田氏はこう振り返る。
内田氏が新卒で楽天に入社したのは2007年のこと。ちょうど会社が、「人が成長することで、楽天の成長がある」というスローガンを掲げ、人材への投資を強化していた時期だった。
希望に燃えて入社した内田氏だったが、すぐ、社会人としての厳しい洗礼を受けることになる。Webディレクターとして編成部門に配属されたものの、取り組みがことごとくうまくいかず、実績を出すことができなかったのだ。その結果、新卒としては異例のわずか半年という短い期間で、営業部門に異動。楽天ショッピングモールへの新規出店を募る営業活動に従事することになったものの、ここでもなかなか結果を出せず、焦り、悩む日々が続いた。
新規顧客に対する営業活動の出発点は、楽天に問い合わせをしてきた顧客のリストを基に、まずは電話で営業を掛けること。だが、成約確率が高そうな顧客のリストは経験豊富な先輩社員が担当しており、内田氏に回ってくるのはどう考えても成約の見込みがなさそうなリストばかり。当然のことながらなかなか契約を取ることができず、上司からのプレッシャーに耐える日々が続いた。
「こんなリストで数字が上がるわけがない。なぜ質のいいリストを回してくれないんだ!」――そんな不満をため込んでいた同氏は、ついに耐えかねて部長に異動を直談判した。
しかし、ここで大きな転機が訪れる。
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