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» 2019年05月23日 08時00分 公開

元楽天トップセールスが編み出した「半年でチームを自走させる」マネジメント、3つの秘訣 (4/4)

[吉村哲樹,ITmedia]
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 「『自分たちはお客さまを幸せにするために仕事をしている』という原理原則を、絶対に曲げないようにしようと話しました。たとえ目先の数字がちらついても、もし、それがお客さまのためにならないことなら、絶対にやらない。もしそうした正しさを貫いた結果、数字が達成できなかったのなら、そのときは俺が責任を取る。その代わり、手段が目的化したような“間違ったやり方”で結果を出したとしても、それは評価しない――。そういう方針を徹底しました」

Photo 例え結果が出たとしても、それが間違ったやり方だった場合は中止すべきだという

 もちろん口だけでなく、それを行動でも示してみせるのが重要だ。

 「今月、あと1件の契約が決まれば目標を達成できる」――。たとえ、そんな場面でも、お客さまのためにならない提案は絶対にしない。こうした態度を示し続けるうちに、メンバーたちは徐々に自ら考え、自ら結果を出せるようになってきたという。

 「チームで共有しているミッションやルールが極めてシンプルですから、メンバーは上司の顔色をうかがわなくても、あるいは上司がメンバーを細かく指導しなくても、皆、どう行動すればいいか自ずと考えるようになります。こうしたマネジメント手法に切り替えてからは、メンバーが自ら行動して成長する『自走する組織』が徐々に回り始めるようになりました。新たなマネジメント手法を試してから約半年で、自走するチームに生まれ変わりました」

社員の生き方と仕事の間に「橋を架ける」

 組織が自走し始めるようになるまでには、やはりさまざまな苦労や試行錯誤があったという。特に、メンバーそれぞれが“自ら考えて行動できるようになる”ための「動機付け」には、さまざまな工夫を凝らした。その際に最も心掛けたのが、「社員の生き方と仕事の間に橋を架ける」ことだったという。

 「終身雇用が崩壊し、価値観が多様化している今日では、働くことに対するモチベーションは人によって異なります。そんな時代に生き生きと働くためには、社員一人ひとりの生き方と会社の目標との間に何らかの接点を見いだして、橋を架けてあげる必要があります。

 別に仕事が人生の第一目標でなくてもいいですし、無理やり生活と仕事をすり合わせる必要もないのですが、最低でもライフとワークの間を自由に行き来できるような橋渡しは必要だと思うのです」

Photo ライフとワークの間に接点を見つけることで、メンバーのモチベーションが上がるという
Photo メンバーの人生経験に根ざした信念に目を向け、仕事との間に橋を架けることが重要

 それと同時に、マネジメントする側の「聖域」を排除することも徹底した。上司だからといって、ミスや怠惰な振る舞いを部下に対してごまかすことは絶対にしない。例えば、自身が業務に追われて約束を守れなかった場合には、メンバー全員の前できちんと頭を下げて謝罪する。部下の人事評価も、徹底的に公正を期している。

 「私のマネジメント手法では、管理職がもっともキツイんです。上司の言葉と行動が一致しなければ、何を言っても部下には響きません。言行不一致の状態が続けば、次第にメンバーは疑心暗鬼になり、余計なコミュニケーションコストが発生してしまいます。こうなると、シンプルなルールやポリシーをベースにした『自走する組織』は、到底、実現できません」

 さらに、部下に仕事を割り振る際には、「その人が最も力を発揮できる環境」を用意するよう心掛けているという。その人が得意とすることや、やりたいと思っていること、あるいはその人の生き方と最もマッチするような仕事をアサインするのが、個人の成長にとっても、また自走する組織の実現にとっても重要だという。

 「企業や組織の生産性を上げる際、私は3つのポイントを重要視しています。1つ目が『個の能力の底上げ』、そして2つ目が効果的な『ツールの活用』による効率化です。この2つを機能させた上で、3つ目のポイントとして個々人の人生にひも付いた新たな仕事のアサインができれば、組織のメンバー一人ひとりの働きがいが向上すると同時に、組織全体も自律的に成長できるようになります。

 人材不足や働き方改革の時代には、理想の人材を別に探し求めるのではなく、このようにして既存の人材や組織の成長を促すようなマネジメント手法が極めて有用なのではないかと考えています」

Photo 「自走する組織」は、規律とルールが明確で、目指すべき方向性が定まっており、個人の内部で、あるいはメンバー同士で幾層も有機的な結び付きを持っている

【聞き手:ITmediaビジネスオンライン編集部 後藤祥子】

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