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元楽天トップセールスが編み出した「半年でチームを自走させる」マネジメント、3つの秘訣(2/4 ページ)

» 2019年05月23日 08時00分 公開
[吉村哲樹ITmedia]

 「部長は親身になって話を聞いてくれましたし、当時、私が置かれていた状況も理解してくれました。でも、同時に、『ここで君を異動させるのは簡単だけど、本当にそれでいいのか? 困難を取り除いてやることはできるけど、それで君に何か得られるものはあるのか?』と問いかけられたのです。

 ここでハッとしました。これまで、私は結果が出ないのをひたすら環境のせいにして、知らず知らずのうちに言い訳ばかりしていたんです。これ以降『もう逃げるのはやめよう』『何かのせいにするにはやめよう』と心に決めました」

 当時、置かれていた状況がシビアであることに変わりはなかったが、「もし、尊敬する三木谷さんだったら、今の自分と同じ状況に置かれたとしても、きっと結果を残せるはずだ」――と、そんな風に考えると、「ここは自身の成長のために是が非でも試練を乗り越えなければいけない」と思えるようになった。

退路を断ち、「顧客本位」を貫くことで変化が

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 この出来事を境に、内田さんは変わった。電話セールスで相手と話す際の“熱量”も、目に見えて違ってきたという。それまでは「どうせまたダメだろう……」と知らず知らずのうちに逃げ道を作っていたのに対して、「もう逃げない」と覚悟を決めてからは、自然と相手の立場に立って熱意を込めて話すようになったという。

 「自分の目標を達成するためではなく、お客さまのビジネスを伸ばすために『これからはネット販売が絶対に必要な時代になるんです!』と、熱っぽく話すようになってからは、徐々に成約率も上がってきて、成績も上向いてきました」

 それと同時に、効率を上げてより多くの仕事をこなせるよう、独自の工夫も凝らすようになった。PCのショートカットキーを覚えることからはじまり、Excelで営業分析ツールを自動化したり、顧客の課題ごとに細分化した提案テンプレートを作成したりと、細かな効率アップのノウハウを独自に研究し、ノウハウを蓄積することで、同じ時間内でも多くの作業をこなせるようにした。

 その結果、「営業マンとしては落ちこぼれ寸前で、もう後がない」というどん底の状況から見事に復活を果たし、トップクラスの成績を上げられるまでになったという。

 その後、東京本社から九州支社へと異動になり、沖縄や九州エリアの新規開拓営業を担当することになったが、ここでも不利な条件を挽回してトップクラスの営業成績を残せるようになった。

 「九州や沖縄では楽天の認知も東京ほど高くなく、『よく分からないIT企業がやってきた』という反応も少なくありませんでした。ITベンチャー企業に対するイメージも決して良くない時代でしたから、単に電話やメールだけの営業ではなかなかお客さまと信頼関係を築き上げられませんでした。そこで、できるだけ人間味が伝わるような営業活動で、IT企業の対する偏見を払拭するよう心掛けました」

 例えば、配る名刺1枚1枚に「九州から日本を元気にしましょう!」「沖縄から日本を元気にしましょう!」といったメッセージを手書きで書き込んだり、1日の移動時間を最適化してなるべく多くの顧客と対面で会って話したり――といった活動を地道に続けていった。こうした“人間臭いアナログな活動”が実を結び、九州・沖縄エリアでの営業成績が急速に上向いていったという。

 「世間一般のIT企業に対するイメージとは異なる泥くさい営業活動で、私たちが本当に『お客さまのビジネスを支援したい』『ともに地域を活性化していきたい』と考えていることを熱意を持って伝える――。こうした活動が実を結んだことは、その後の仕事に対する考え方に大きな影響を与えることになりました」

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