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池澤夏樹が「人類の終末」を問い続ける意味池澤夏樹インタビュー【中編】(2/5 ページ)

» 2019年07月30日 05時00分 公開
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なぜ「終末」にこだわるのか?

――池澤さんのSF的な作品を他に思い浮かべると、人類や恐竜など特定の「種」の滅びといった「終末論」を扱った話も多く登場します。エッセイ集の『楽しい終末』(中央公論新社)などが代表的で、やはり具体的な科学の知識やエビデンスを元に、想像するしかない恐竜の絶滅や人類の終わりについて論じています。なぜ「終末」に池澤さんはこだわるのですか?

池澤: 未来はどうなるか分からない。けれど、「現在」という断面で切った時、さまざまな要素が見えてくる。それを「外挿」(既知の資料から未知のことを推測すること)するわけですよ。良い話も、悪い話も。

 一時期は「未来学」というのがあって、1990年代は「明るかった」のです。それがだんだん崩れてきた。僕は悪い方に(未来を)想像していくことで、一種の警告をしているのだと思う。

 原発がいい例ですよ。「ちょっとまずいんじゃないか、止めた方がいいよ。それ以外にこういうやりかたもあるよ」というような提案をしているのです。その果てに悪いことがたくさん起きたら、人類の最後になるかもしれない。

 一番良い例が「ドレイクの方程式」です。さまざまな因子を掛け算で掛けていって、その中で「1つの文明が終わるまでの寿命」を、フランク・ドレイク(米国の天文学者)は1万年と計算した。

 われわれの場合の「文明らしきもの」を、2000〜3000年と(仮定)しましょう。あと7000年です。核エネルギーを持ってしまった場合、そして(人類の)倫理観が変わらなかった場合、本当にそんなに持つのか。「1万年」という数字は楽観的すぎないか、と。

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