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» 2019年07月31日 07時00分 公開

6県を通る1400キロのルートも:周回遅れだった日本の「自転車ツーリズム」 訪日客を呼び込む“切り札”となるか (4/4)

[甲斐誠,ITmedia]
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自転車道整備の完了率は84%

 日本でも、こうした世界の取り組みに追い付こうと、数十年前から取り組みを進めてきた。各地に「大規模自転車道」と呼ばれる専用道を少しずつ造ってきたが、車優先の時代背景には逆らえず、空港やダムなどの「インフラ整備はおおむね完了した」(財務省)とされる現代でも、ハード整備自体がいまだ不足している状況だ。

 国土交通省によると、1970年に成立した自転車道整備法に基づく大規模自転車道計画の完了率(2016年度末)は84%にとどまっている。車道や歩道に比べて優先順位が低いと見なされてきた上、予算不足もあり、なかなか自転車専用道の敷設が進まない。

photo 大規模自動車道計画の完了率は84%(出典:国土交通省 ナショナルサイクルルート制度検討小委員会

 そんな中、同省では近年、車道を走る自転車の危険性を減らすため、平仮名の「く」の字に似た記号で自転車の通行帯を表す「矢羽根型路面表示」や道路標識を増やすなど、予算のかからないソフト対策に力を入れている。

photo 「矢羽根型路面表示」がある道路

 ナショナルサイクルルート制度ももちろん、新しく自転車専用道を一から建設する訳ではない。すでにある自転車道を生かし、周辺施設や標識などを充実させることで、各国からサイクリストをいっそう受け入れられるようにすることを目指している。

 当初の想定では今夏にも創設の運びだったが、有識者から基準に関して多様な意見が相次ぎ、意見集約に時間がかかっている。検討会委員長を務める東京工業大学大学院の屋井鉄雄教授自身、筋金入りのサイクリストであり、他にも思い入れの強いメンバーが多い。検討に当たっては各地域のルートを実際に試走するなど現場重視の姿勢も貫いている。ナショナルサイクルルートの基準を巡っては、「徐行義務のある自転車歩行者道はルートに入れてほしくない」「万が一の事故の際、救急車がルートに入る必要があるのでは」など、安全性の確保に関する意見が多いように思う。

 いずれにせよ、本年度中にはナショナルサイクルルートが創設され、多くの人々が楽しめるようになるのは間違いなさそうだ。ただ、安全性や周辺施設の充実などの面で世界基準といえるのは、現状では距離が基準未満の「しまなみサイクリングロード」くらいという見方もある。実際にどの地域のルートが選定されるのか、注目されそうだ。

 今回、日本政府が踏み出すのはナショナルサイクルルート制度の創設という小さな一歩にすぎないが、自転車政策を語る上では極めて重要な変化だ。20年の東京五輪・パラリンピックに合わせて訪日した外国人サイクリストが、日本旅行を満喫できるような環境づくりにもつながることを期待したい。

著者プロフィール

甲斐誠(かい・まこと)

1980年、東京都生まれ。現役の記者として、官公庁や地域活性化、文化芸術関連をテーマに取材、執筆を重ねている。中部・九州地方での勤務経験あり。


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