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「“好きを仕事に”など、けしからん!」という人が時代遅れになったわけ(1/3 ページ)

» 2019年08月06日 08時00分 公開
[安達裕哉Books&Apps]

この記事はティネクトのオウンドメディア「Books&Apps」より転載、編集しています。


 最近、以下のようなフレーズを、本当によく見かけるようになった。

  • 「好きなことを仕事に」
  • 「やりたいことを見つなさい」
  • 「好きなことだけをやれ」
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 ネット上のみならず、旧来のメディア上にも、そのような言説が踊る。「前から、そう言う人っていなかった?」という方もいるかもしれない。それは、その通りだ。

 人類は常に「昔より、より大きな自由」を獲得してきた。スティーブ・ジョブズ氏は、2006年のスタンフォード大学のスピーチで、こう言った。

「スティーブ ・ジョブズ・スタンフォード大・卒業式スピーチ・2005年」

 アメブロで20万人のフォロワーを抱える、心理カウンセラーの心屋仁之助氏は、「好きなことだけして生きていく」という本を2014年に出している。

 Googleが、ヒカキン氏を使ってYouTubeで「好きなことで、生きていく」というプロモーションを打ったのも2014年だ。

「好きなことで、生きていく - HIKAKIN - YouTube [ Long ver. ]」

 この頃までは、「好きなことをしていい」というのは、「従来の枠組みからの開放」を表していた。

  • 「従来の枠組みを外れてもいい」
  • 「好きなことをして生きていい」
  • 「疲れましたね、もう周りに合わせて頑張らなくても大丈夫ですよ、好きなことに忠実でいいんです」

 そういった「いやし手」の言葉が、「好きなことをしよう」だった。

 「ありのーままでー」という『アナと雪の女王』がヒットしたのも、2013年。あなたは、あなたの好きなようにしていい、ありのままでいい、そういう「勇気」を与えることが、「好きを仕事に」といった言説のバックボーンだった。こういった言葉に、救われたと感じた人は多かったのではないだろうか。少なくとも、私はその一人だった。

シフトした「好きを仕事に」の意味

 ところが最近は様子が異なる。

 堀江貴文氏は、『好きなことだけで生きていく。』というほぼ同じようなタイトルの本を2017年に出しているが、内容は上の本と大きく異なる。何が異なるのか。それは「好きなことを仕事にしないと、豊かになれない」という警告が発せられていることだ。

本書は、いわば僕からの「最後通告」だと思ってもらいたい。既存のレールに乗って生きていくことは、これからの時代、通用しなくなる。

僕が言う1%の人にならなければ、本当の意味で仕事に没頭することはできなくなる。

book 『好きなことだけで生きていく。』(ポプラ社) 堀江貴文氏 著

 「いやいや、ホリエモンが煽っているだけでは?」と思う方もいるかもしれないが、そうではない。この傾向が顕著に現れたのは、2016年にロンドン・ビジネススクール教授、リンダ・グラットン氏が「ライフ・シフト」を発表してからだ。ライフ・シフトではまさに、「好きを仕事に」の具体的な中身が述べられている。

book 『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社) リンダ グラットン著

長寿という贈り物を手にする世代は、もっと選択肢が多く、もっと多様な人生を送ることができ、もっと多くの選択をする必要がある。

そのため、正しい道を選び取るために時間を費やすことの重要性が高まる。

未来を見据えて、自分の監視と情熱に沿った教育を受けること。

自分の価値観に適合し、やりがいを感じられ、自分のスキルと関心を反映していて、しかも袋小路にはまり込まないような仕事を見つけること。

自分の価値観を尊重してくれ、スキルと知識を伸ばせる環境がある就職先を探すこと。

長く一緒に過ごせて相性のいいパートナーを見つけること。

一緒に仕事ができて、自分のスキル及び働き方との相性がよく、できれば自分を補完してくれるビジネスパートナーと出会うこと。

具体的にはこうした事が必要になる。

 繰り返すが、重要なのは「好きなことを仕事に」が「必要になった」と述べられている点だ。

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