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「“好きを仕事に”など、けしからん!」という人が時代遅れになったわけ(2/3 ページ)

» 2019年08月06日 08時00分 公開
[安達裕哉Books&Apps]

 最近では、「好きなことをする」「いや、仕事はそういうものではない」というのは議論の対象にすらならない。高度に専門化された社会では、好きなことをして、特定の分野を極めないと、豊かになれないのである。

 実務家、起業家、フリーランサー、投資家、芸術家、作家……あらゆる分野の人々が「好きを仕事に」という。いや、内田樹氏のような「グローバル資本主義嫌い」の、保守的な思想家ですら、「好きなことをせよ」という。

人はやりたいことをやっている時に最もパフォーマンスが高くなります。難局に遭遇して、そこで適切な選択をするためには、他者の過去の成功事例を模倣することではなく、自分自身の臨機応変の判断力を高めた方がいい。

そして、自分の判断力が高まるのは、「好きなことをしている時」なんです。「自分はほんとうは何をしたいのか?」をいつも考えている人は「これはやりたくない」ということに対する感度が上がります。

そして、生物が「これはやりたくない」と直感することというのは、たいてい「その個体の生命力を減殺させるもの」なのです。自分の生きる力を高めるものだけを選択し、自分の生きる力を損なうものを回避する、そういうプリミティヴな能力を高めることがこの前代未聞の局面を生き延びるために一番たいせつなことだと僕は思います。

自分がしたいことがあったら、それをする。自分が身につけたい知識や技術があったら、それを身につける。自分が習熟したい職能があったら、それを学べばいい。

つまらない算盤をはじいてはいけません。「一時我慢して、それさえなんとか身につけておけば、あとは一生左うちわ」などというものにふらふらと迷い込んではいけません。弁護士や医師でさえ雇用の危機だという時代になるんですから。

(出典: 文春オンライン「「内田樹が語る雇用問題――やりたいことをやりなさい 仕事なんて無数にある」

 これは明らかにこれまでとは異なる傾向で、私はひそかに驚いていた。

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