クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2019年08月13日 07時00分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:新型タントデビュー DNGAって一体なんだ?(後編) (2/5)

[池田直渡,ITmedia]

 大事なのは「固定と変動」の概念だ。設計も生産も固定と変動がキーワードなのだが、ますは設計の話からしよう。

 シャシーの重要な部分。例えばサスペンション取り付け部を理想的に設計し、これを固定する。固定とは、ほかの要素に対して現場合わせで譲歩しないこと。そのために、軽自動車、Aセグメント、Bセグメントを一括企画し、その段階でそれぞれに何が求められるかをあらかじめ熟慮して、必要要素を織り込んでおく。その代わり、固定した部分はもう動かさない。あとから「やっぱりもう少しこうして欲しい」はなしだ。固定は変動を織り込んで固定するのだ。

 変動がなぜ必要かといえば、もちろんサイズが違うことがひとつ。そして作ったクルマを、見た目や大きさだけ変えた金太郎飴のような商品展開にさせないためだ。それぞれにしっかりと個性のある商品として成立させるために、ホイールベースやトレッドだけでなく、個別商品のユニークさが明確に打ち出せる「変動」部分をあらかじめ織り込んでおく。

設計思想を軽自動車とAセグメント、Bセグメントで共通化するという一括企画開発(ダイハツ資料より)

 例えば、3サイズで12車種のバリエーションを作る時のことを考える。どのクルマでも不変の固定部分に従来の2倍の開発工数を掛けたとしても、バラバラに設計する時に比べれば6分の1の工数で済む。少々極論かもしれないが、まさに「良品廉価」のためのソリューションだといえる。

 少なくとも固定部分については、最初に一台を作ってしまえばやり直す必要がない。だからトータルでの開発工数低減と性能向上が両立できるのだ。

 生産面に関しては、12車種それぞれにサイズや形状は違っても、生産設備で治具に固定する部分は完全に同じ形状にする。あるいは、組み付けの手順の考え方を統一する。それによって、同じ設備で軽もAセグメントもBセグメントも作れるようになる。だから設備投資が減る。

 設計に関しても生産に関しても、従来は、特に聖域が定められていなかったので、常に他の部分とのすり合わせや譲り合いが求められてきた。そうやって調整することが当たり前だったが、固定部分を揺らぎなく明確化したことで、そうした調整そのものもいらなくなって、工数がさらに削減できるのだ。

 ダイハツの場合、そうやってコストダウン(あるいは重量も同じだ)した余力で、安全装備や快適装備を追加していく。販売価格は最初にキャップを被せられ、それを超えることは絶対に許されない。つまり安全装備が法制化で義務付けられたら、それを追加する分のコストを他の部分の原価低減で絞り出さなくてはならない。そういう目標設定厳守のためにはコモンアーキテクチャーは絶対に重要なのだ。

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