米国の逆イールドは景気後退のサイン? 株価への影響は

» 2019年08月19日 18時14分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 米国債券市場で、長期金利と短期金利が逆転する、逆イールドが生じたことが話題になっている。過去の景気後退局面では、いずれも直前に逆イールドが発生していることから、景気後退のサインが点灯したとみなされているからだ。

 実際、株式市場にも影響が出ている。8月14日には、米国10年債利回りが一時2年国債の利回りを下回った。この日、米国大型株の指数ダウ工業株30種平均は前日比で800ドルを超える下げとなり、同時に円高が進んだ。

逆イールドとは?

 米連邦準備制度理事会(FRB)や日銀が定めるいわゆる政策金利が短期金利に影響を与えるのに対し、長期の金利は市場参加者が持つ将来の見通しによって決まる。この見通しは、国債の売買という形で現れ、将来の見通しに不安を持つと国債が買われ、利回りが低下、つまり長期金利が下がることになる。

 期間別の金利をグラフに描いたものをイールドカーブと呼ぶ。通常は、短期金利のほうが低く、長期金利のほうが高い。ところが、将来不安から長期債の利回りが減少すると、長短の利回りが逆転する場合がある。これが逆イールドだ。

イールドカーブ

米国の景気後退の直前には逆イールドが発生

 米国では1990年以降、3回の景気後退局面があったが、「米10年国債利回りと米2年国債利回りの動きを確認してみると、そのいずれにおいても、景気後退局面を迎える前に、逆イールドが発生している」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストのレポートより)。

 ただし、逆イールドが発生したからといって、すぐに景気後退が訪れると考える必要はない。「逆イールド発生から景気後退まで、平均すると約2年2カ月を要している」(同市川氏)

米国の逆イールド発生タイミングと景気後退期(三井住友DSアセットマネジメントのレポートより)

逆イールドから景気後退まで、米国株は上昇

 逆イールドが景気後退のサインだとしても、実際に景気後退が始まるまでに、株価はかなりの上昇を見せてきたという歴史がある。ダウ工業株30種平均でいうと、この間11〜34%上昇した。88年発生の逆イールド発生から90年の景気後退入りまでの間で34%上昇、同98年から01年までは11%上昇、05年から07年までは23.8%上昇している。

 一方で、同時期の日本株は、「バブル崩壊」「金融危機」とも重なり、約2.9%上昇、約17%下落、約5%下落という結果だった。

逆イールド発生から景気後退入までの日米株価の比較(三井住友DSアセットマネジメントのレポートより)

 市川氏はレポートで、「米国の逆イールド発生で、直ちに米国株や日本株の下落を連想する必要はない。ただ、米長期金利の低下による『円高進行』は、日本株の上値を抑える要因となるため、幾分注意が必要」だとしている。

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