「丸ビル」の17年 なぜ“オフィス街・丸の内”は変わったのか丸の内は今も“31メートルの街”(3/4 ページ)

» 2019年08月28日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

休日の来街者数は3倍に

 丸ビルの建て替えを皮切りに、周囲の風景も大きく変わっていった。07年に開業した「新丸ビル」を含め、大規模な商業施設を備えた高層ビルが増えた。そんな変化の中でも、人の流れを変えるきっかけとなったのが、メインストリート「丸の内仲通り」の再整備だ。

 丸の内仲通りは、東京駅から見ると、丸ビルや新丸ビルの裏側に面している道路。丸の内の中心部を南北に貫いている。1990年代までは金融機関の路面店が多かった場所だ。

 丸ビル建て替えに合わせて、この仲通りを「“人”が中心の空間」に変えるため、まずは仲通りに面したビルの1階部分に、有名ブランドの店舗や飲食店を誘致。さらに、街を回遊しやすくするために歩道を広くした。車道の幅を2メートル狭めて、両端の歩道を1メートルずつ広げたのだ。歩道にはアルゼンチン斑岩を敷いて石畳の道をつくり、ケヤキの街路樹を植えて緑あふれる空間にした。

1967年当時の丸の内仲通り(左)と、2016年の丸の内仲通り

 雰囲気が一変した仲通りでは、イルミネーションや盆踊りなどのイベントが1年を通じて開催されている。2015年からは、歩行者に道路を開放し、オープンカフェやアートなどを楽しめる「アーバンテラス」を実施。丸ビル建て替え前と比べて、休日の来街者数は約3倍になったという。

 オフィス街から、多機能で多様な街へ。丸の内が変わった背景には「交流を活発にしたい」という、再構築を始めた当初からの狙いがあった。「思い描いていたのは、さまざまな人が交流してイノベーションが起こる街。オフィスばかりどんどんつくっていくのではなく、『長期的に丸の内をどうしていくか』という視点で判断した」(広報担当者)。今でこそ、“イノベーション”という言葉があふれているが、丸の内には20年近く前からその考え方があった。

【更新:2019年9月12日 一部内容を変更しました。】

オープンカフェなどを楽しめる場所に

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