「ミニ四駆」誕生の舞台裏 プラモデルとクルマの幸せな関係ものづくりの歴史(5/6 ページ)

» 2019年08月30日 05時00分 公開
[小林昇ITmedia]

F1ブームの沸騰

 ミニ四駆が小学生を中心に大ブームになっていた頃、少し上の世代ではF1が人気になっていた。67年、タミヤがホンダF1を発売した当時は、日本ではあまり知られていなかったF1が、20年近くを経てブームとなったのである。きっかけは87(昭和62)年、鈴鹿サーキットで開催された日本最初のF1グランプリをフジテレビが放送したことだった。中嶋悟がヒーローとなり、F1雑誌が続々と創刊された。このブームにプラモデルメーカーもF1のキットをこぞって発売した。

 その中でもタミヤは先行した。前年、F1人気の広がりを予想して1/20ウィリアムズFW-11ホンダを発売。このキットは新しいファンにも作り易いよう、パーツ数を減らすなどの工夫がされていた。続けて中嶋悟の乗るロータス・ホンダ99Tや、アイルトン・セナのマクラーレン・ホンダMP4/4も発売され、大ヒットとなった。他のメーカーも続々参入し、市場は賑わった。

photo ロータス・ホンダ99T(amazonより)
photo マクラーレン・ホンダMP4/4(amazonより)

新しいミニカーの登場

 このF1ブームと前後して、ミニカーの世界で大きな変化が訪れた。ミニカーは自動車の完成模型であることで、プラモデルとは一線を画していた。もともと、ダイキャスト製のミニカーは海外では第二次世界大戦前からある古い玩具・模型で、戦後マッチボックスやコーギーなどの海外製品が輸入されていた。国産のミニカーは59(昭和34)年に旭玩具が最初にモデルペットという名称で発売したとされ、58(昭和33)年生まれの国産プラモデルとほぼ同じ歴史を持つ商品だった。

 70(昭和45)年にはトミーがミニカーを発売し、トミカとして人気を博した。ところが80年代後半からは、子ども向けのダイキャストカーとは別に、マニア向けにダイキャストだけでなく、レジン(樹脂素材)やメタルパーツを使った精密なミニカーが登場する。

 これらのミニカーはトミカなどと異なり、スケールは1/12〜1/18の大スケールで非常に精密度が高く、完成品であることで価格も1万円を軽く超える。同じスケールのプラモデルなどにくらべると格段に高いものの、完成品が手に入るということで需要はあり、一時期プラモデルの自動車のマーケットを奪うのではないかと言われたこともあった。

 現在はプラモデルメーカーでも完成品を発売したり、マニア向けのミニカーの輸入代理を行なっているところもある。

photo 人気を博したトミカ(トミカ歴史観のWebサイトより)

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