「ミニ四駆」誕生の舞台裏 プラモデルとクルマの幸せな関係ものづくりの歴史(6/6 ページ)

» 2019年08月30日 05時00分 公開
[小林昇ITmedia]
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ミニ四駆、空前のブームへ

 94(平成6)年、タミヤは人気に陰りの見えてきたミニ四駆に新シリーズとして「フルカウルミニ四駆」を投入した。すでにミニ四駆は当初の実車を縮尺した体裁のものから、架空の車体デザインになっていたが、それをさらに推し進め、それまでのフォーミュラタイプから、タイヤをカバーしたフルカウルのデザインへと進化した。

 このフルカウルタイプのミニ四駆は子どもたちからは「カッコイイ」と高い支持を得た。さらに新しく始まったマンガ連載『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の人気とも相まって、再びミニ四駆ブームに火がついた。96(平成8)年にミニ四駆ブームはひとつの頂点を迎えたのだ。

 このミニ四駆の成功について、田宮俊作社長は「子どもはやはり走るものが好きなんですね。自分でいろいろ工夫し、改造して少しでも速く走らせようとする。自分で工夫して組み立てるという中に、プラモデルの要素が凝縮されているのです」と語る。

photo 1994年に発売され、“第2次ミニ四駆ブーム”に火を点けた「フルカウル」タイプのミニ四駆

自動車プラモデルのこれから

 2019年5月に静岡で開催された第58回静岡ホビーショーを見ると、自動車のプラモデルはさまざまなメーカーが趣向を凝らしていた。例えばタミヤのブースでは実車のトヨタGRスープラとプラモデルの新製品GAZOO Racing TS050を同時に展示し、もちろんミニ四駆とRC車のコースも設置されている。

 またアオシマも「三菱 スタリオン Gr.A '87」 の実車を展示し、さらに新しい自動車シリーズのザ・スナップキット・シリーズをPRしていた。これは塗装不要、接着剤不用の新しいキットで、価格も安く、新しい顧客を獲得しようという意図が感じられる。

 かつて飛行機プラモデルで名前を馳(は)せたハセガワも、最近は80年代から90年代にかけて人気だった1/24スケールの国産車を発売して人気を呼んでいる。会場では1988年に発売されたトヨタスターレットEP71ターボSの1/24キットが展示されていた。

 最後に改めて田宮俊作会長に、プラモデルと自動車メーカーの関係について聞いてみた。

 「やはり少子化とか若者の車離れということが叫ばれて、自動車メーカーの側にも危機感があるのだと思います。なるべく小さい時から車に触れさせたい、そういったことが例えばショールームでのミニ四駆イベントやRCカーのコンテストにつながっているのでしょう。

 ショールームに来てもらって、子どもに車の名前を覚えてもらいたい、その呼び水にミニ四駆がなっているのかもしれません。ミニ四駆は以前、ブームに波がありましたが、現在は非常に安定して売れています。それはひとつには東南アジアの国々、マレーシアやインドネシア、台湾、香港、韓国などがミニ四駆の大切なマーケットになりつつあるということと、国内では自動車メーカーとの良い関係が続いているからだと思います」

 60年を迎えた国産プラモデルは令和を迎え、今後も自動車メーカーと組みながら、新しいクルマのキットを生み出していくことだろう。(一部、敬称略)

photo 静岡ホビーショーではスープラとプラモデルの新製品GAZOO Racing TS050を同時に展示
photo 青島文化教材社 1/24 BEEMAXシリーズ No.28 三菱 スタリオン Gr.A 1987 JTC仕様 プラモデル(amazonより)
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