このバイアスを生み出す原因は、私たちの脳が無意識のうちに、直観的な意思決定と意識的・論理的な意思決定を使い分けてしまうという作用が働くからです。一例を挙げてみましょう。
同じような営業の仕事をしている部下が2人いたとして、それぞれが挙げた営業成績が数値として示されたとします。客観的な数値を比較して、二人の部下の評価を決めようとしても、私たちの脳は必ずしも全ての情報を公平に扱ってくれるとは限らないのです。
例えばA君という部下は、企画会議などであなたの意見にいつも賛成し、後押しをするような発言をしているとします。一方B君は、時にあなたの意見と対立するような発言をしますが、それはとてもまともな正論だとします。
あなたの無意識下にある感情レベルでは、どちらかと言えばA君に対して好意を持ち、B君に対しては敵意とまでは言いませんが、あまり好ましくない印象を持ってしまいます。その結果、この印象の差がバイアスとなり、A君の評価を高くしてしまいがちです。
例えば客観的な数値として表れた2人の営業成績が同じであったとしても、「A君は頑張った」「B君はたまたま環境が良かった」などと、2人の評価に差をつけることを正当化する情報を、後付けで探し始めてしまいます。
部下育成を考えるときにも、このバイアスの問題は1つの大きな焦点になります。日頃、同じ職場でよく接している部下と、自分とは異なる事業所に勤務していてあまり接する機会のない部下がいる場合、善きにつけ悪しきにつけバイアスがかかります。また、同じ職場にいる部下たちについても、さまざまなバイアスによって公平に育成計画を作成することは難しくなります。
人はどうしてもバイアスによって人を評価してしまい、その育成においても濃淡が出てしまいます。自分が何かしらのバイアスにとらわれていないか、チェックしてみてください。
このバイアスの影響を極力少なくするためには、できる限り客観的に育成ニーズ(デベロップメント・ニーズ)などを評価できるような仕組みやフレームワークが必要になります。
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