今回の寄港誘致計画に反対している奄自資料やWWFジャパンも、クルーズによる観光振興そのものを否定しているわけではない。奄自資料では、大型客船ではなく小型客船によるエコクルーズを意識した寄港を提案し、WWFジャパンの要望書では自然環境に与える悪影響を防止するために科学的評価による受け入れ枠の設定や、情報公開による地域住民への周知と合意形成を訴えている。一方で、瀬戸内町町長は、計画断念の記者会見で「クルーズ寄港誘致は継続していく」と発言している。
奄美大島の入り組んだ海岸線が生み出す豊かな自然は、以前から日本の客船を利用してきた船客や、豊富なクルーズ体験を有するヨット乗りたちから高い評価を得ている。そして、最近のクルーズに対する嗜好は、従来のパッケージツアー的な集団による観光から、探検クルーズや異文化体験にシフトしている。これらのことから、奄美大島海域に対する寄港意欲は今後も高まる可能性は高い。
その奄美大島の自然と地域住民の歓迎があってこそ、よりよいクルーズが実現できる。そして、今回の誘致計画で表面化した問題や懸念について、解決できる方策は技術的に確立している(大型客船であっても上陸する人数は制御できるし、ラグジュアリー客船に乗る富裕層がより良い船客であるとは限らない)。RCLであってもそれ以外のクルーズ企業であっても、奄美大島への寄港を考えるなら、まずはWWFジャパンが掲げた要望項目に対して十分に配慮すべきだろう。
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