クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

スバルとトヨタ、資本提携強化でどうなるのか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2019年09月30日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

自動運転時代の勝算

 もうひとつは自動運転に関するアドバンテージだ。少し前にUberの自動運転実験中の死亡事故がニュースになっていた。管理上の問題も多々あった事案と思われるが、本質的にリアルな実験には危険が伴う。そこで現在はこの実験をバーチャルに行う取り組みが増えているのだ。

 トヨタはすでに、市販車にDCM(Data Communication Module)の装着を進めている。トヨタの説明によれば「DCMはテレマティクスサービス専用に開発された車載タイプのインテリジェント通信モジュールです。堅牢(けんろう)なユニット内には、DCMを統合管理するCPUの配下に、音声通話と高速データ通信モジュール、及び緊急時やセキュリティアラーム発生時にデータを発信するモジュールが組み込まれています」

 つまりDCMは、旅客機におけるフライトレコーダーのような、操作やアクシデントに対する「挙動」「操作」のログの収集保存に加え、クルマと外部との高速データ通信、さらにドライバーの音声通信接続を司る通信端末だ。

 データの使用に関するプライバシーポリシーなどの問題が完全に片付けば、世界中を走るトヨタ車が、前方カメラ映像と、それに応じたドライバーの全ての操作をリアルタイムで送信し続けることになる。クラウド上でこのデータを待ち受けるAIによってこのリアルな現場から送られてくるデータに基づいてサーバ上でバーチャルに自動運転を試み、また同時にリアルなドライバーとの操作の差分を検証することができる。

 仮に全世界を走るトヨタアライアンスのクルマの全てにこれが装着されたら、数億台レベルのクルマが常時実験をしていることになり、Uberの例のように、リアルなテスト車両を走らせて収集できるデータでは足元にも及ばないデータ量とバリエーションを握ることになる。

前方カメラで撮影した画像データを元に高精度地図を自動生成するほか、AIによるサーバ上でのバーチャル自動運転など、「つながる」ことで技術の進歩は大いに進む

 ここで重要なのは世界をカバーしていることだ。例えば右側通行と左側通行、信号とラウンドアバウト、道路の状況や歩行者のモラルなど、例外ケースをより多く取り入れないと精度が上がらない。

 こうなると、数こそが力だ。多くの地域や国々でリアルワールドを走るクルマからデータを集めなければならない。米国でしか売れないアメ車や、逆に米国で売れない欧州車には大きなハンデになるだろう。

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