クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

果たして自動運転レベル3は、ドライバーにとって優しいのか?自動運転に対する取り組みは、メーカーによって二極化(4/5 ページ)

» 2019年10月02日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

乗用車と商用車では自動運転導入の目的が大きく異なる

 乗用車の自動運転は、行楽や帰省などで高速道路を使って移動する際に、目的地での楽しみのために移動時の疲労を軽減させるのが目的となる。つまり、目的地まではクルマでの移動を望んでいないドライバーが利用するための運転支援システムだ。またクルマの運転が好きでも、延々と続く渋滞は誰かに運転を代わってもらいたくなるものだ。レベル2以上の自動運転は、そうした状況にはとても適した装備といえる。パーソナルモビリティとしての自動運転は、未熟なドライバーのアシスト、快適性追求、ドライバーの体調急変時のサポートなどには役立つだろう。

 それに対して大型トラックの自動運転は、長距離走行の疲労軽減や集中力低下による操作ミスを防ぐのが目的になる。業務の効率化、労働環境の改善といった実務上の問題を解決するためのソリューションの1つだ。

 つまり運輸業界こそ自動運転が求められる現場であるのだが、現実はそれほど単純ではない。レベル1のアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)ですら、居眠り運転を誘発しかねないと、使用を禁じている運輸会社も存在する。自動運転の導入においても、その判断は完全に二極化している。

 確かにレベル2の自動運転を導入することで、高速道路上の巡航では緊張が緩み、睡魔を誘発する可能性はある。現行のスーパーグレートでも、ドライバーの視線や瞬きを赤外線カメラでモニタリングする仕組みを取り入れているが、ドライバーの疲労度が高まったり居眠りしたりする恐れがあっても、ドライバーに警告を促すだけでそれ以上の抑制効果はない。レベル3の自動運転になっても、そうした環境は変わらない。居眠りしたまま自動運転で走り続ける大型トラックが出現する可能性は十分にあるのだ。

 スーパーグレートの自動運転機能開発を担当した、三菱ふそうトラック・バス 開発本部 エンタイヤビークル開発統括部長の恩田実氏は、「これまでは居眠りをしてしまったら、かなりの確率で衝突事故を起こしてしまった。しかし(レベル2の)自動運転にすれば、たとえ居眠り運転をしてしまっても、前走車に追突する可能性は格段に下がる。車線逸脱をして壁などに衝突することもなくなる。これだけでも従来より大幅に衝突事故を起こす確率は下げられる」と、自動運転機能導入の効果を強調する。

日野自動車がテストコース内で披露した隊列走行による車線変更。追従するドライバーはコース内では完全に手放し走行で、前走車の車線変更に従って自動的に車線変更を行なった。レベル3の自動運転はすでに高い完成度となりつつある段階だ

 こうした運転支援装置に頼ることによって、集中力が低下した状態での運転でも衝突事故を起こすリスクが減ることは間違いない。レベル2の自動運転を搭載した大型トラックが普及すれば、高速道路上での居眠りやわき見による追突事故は、確実に減少するだろう。

 しかし、自動運転のシステムに起因する新しい種類の交通事故が起こる可能性は充分にある。それに衝突被害軽減ブレーキですら誤作動、あるいは作動しないケースもあるほどだ。レベル2の自動運転でも追突事故を絶対に起こさない、という保証はない。

 実際の路上では合流や車線変更などにより、目前に急に前走車が出現するような状況もある。いくら実験や走行テストを繰り返しても、開発中には起こらなかった事態に陥るケースは十分に考えられるのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.