自動運転の開発には、膨大なデータが必要となる。つまり開発には途方もないカネと時間が掛かるのだ。それまでの開発費を回収するために、レベル3を投入するメーカーが現れても不思議ではない。ユーザーのための自動運転が結局、クルマを売らんとするための装備の1つになってしまう可能性もある。それくらい今後の自動車市場は熾烈(しれつ)な販売競争になるだろう。
現在の道路インフラやドライバーの運転責任を考えると、レベル2までの自動運転が、クルマとしては程良いバランスの装備といえるのかもしれない。レベル4は便利になる反面、利用できる環境が高速道路などに限定される。高速道路より難易度の高い市街地だけをドライバーが運転することで、よりストレスを感じるようになる可能性もある。
何年先まで見通すかによるが、やがて登場するであろう無制限の自動運転であるレベル5は、パーソナルモビリティを単なる無人タクシーにしてしまうかもしれない。それは単に便利なだけの乗り物と化してしまうだろう。そのほうが快適、コスパに優れるという向きもあるだろうが、プライベートカーを求める層は絶対に一定数存在し続けるはずだ。
便利ならば何でも良いという段階は過ぎようとしている。自動運転に対して期待し過ぎるのは、そろそろ終わりにするべきではないだろうか。
クルマは命を運び、万が一の際には乗員を守ってくれるが、使い方を誤れば人命を奪ってしまうこともある機械だ。やはり認知・判断・操作をドライバーが責任をもって行い、運転を、移動を楽しむのがクルマの本来在るべき姿ではないか。
商用車や公共交通機関としてのバスやパーソナルモビリティはレベル5を目指すのかもしれないが、自家用車ではそれは魅力的に映らないのは、筆者の感性が古臭いだけではないだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング