東京2020パラリンピックまで残り1年を切っている。1年前となる8月25日に開催されたカウントダウンセレモニーでは、メダルのデザインや聖火リレーのユニフォームなどが発表された。
8月22日に観戦チケットの抽選申し込みの受付が始まったこともあり、さまざまなイベントが開催され、大会への機運を盛り上げようとしている。
会場が満員の観客で埋め尽くされることは、大会の成功を考える上ではもちろん大事なことだ。だが、パラリンピックの意義は、大会を通して開催地がどのように変化するかという点にもある。スポーツ庁の鈴木大地長官をはじめ東京2020パラリンピックに関わる人々やスポンサー企業、選手たちに取材し、現状をどのように受け止めているのかを聞いた。
8月25日、東京・渋谷区のNHKホールで、東京2020パラリンピック1年前カウントダウンセレモニーが開催された。日本障がい者スポーツ協会と日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長が、毎年8月25日を「ジャパンパラリンピックデー」とすることを宣言。パラリンピックのメダルデザインや、聖火リレーのユニフォームなどが初めて披露された。
ユニフォームのお披露目では、4人の聖火リレー公式アンバサダーが登壇した。射撃でパラリンピックに過去3回出場した田口亜希さんと、女優の石原さとみさん、それにサンドウィッチマンの2人。石原さとみさんはパラリンピアンと交流をしていることを明かしながら、パラリンピックをどのように見ているのかを語った。
「アンバサダーになって、普段女優業をしている中では出会わない方に会う機会をいただいています。この間パラリンピアンの皆さんとご飯を食べる機会があって、いろいろな話を聞くと、どういう思いで、何がきっかけで競技を始めたのかが分かりました。私は『自分はその人の人生についての話を聞くことが好きなんだな』と思いました。
競技にそれぞれ楽しみ方があることも知りました。例えば、女性のパワーリフティングを生で見ると、すごく迫力があります。射撃では、ただ丸い穴をのぞいただけで、50メートル先の的を狙うことのすごさも分かりました。パラスポーツは、知らないと楽しみ方が分かりませんが、実際に知ると面白いと思います」
石原さんが語った、「知る」ことで面白さが分かるという指摘は、パラリンピックを盛り上げていく上で重要な視点だ。
8月25日の前後には、パラリンピックやパラスポーツを知ってもらうためのイベントが東京都内の各地で開催された。大会1年前を盛り上げることに加えて、8月22日に始まった観戦チケットの申し込みを知ってもらうことも大きな目的だったと考えられる。
そのうちの一つ、「新豊洲サマーナイトフェス」の会場を8月23日に訪れた。会場にはパラスポーツを体験できるコーナーが用意されていた。オリンピックに3大会連続で出場した元陸上選手で、現在はパラスポーツの支援などをしている為末大さんと、パラリンピック水泳の木村敬一選手、リオデジャネイロパラリンピックの砲丸投げで金メダルを獲得したドイツ代表のニコ・カッペル選手のトークショーも開催された。
為末さんが「東京2020をきっかけに、東京はどんな町になったらいいと思いますか」と質問すると、木村選手は「まずは東京の人たちに、障がいのある人の存在を知ってもらいたい」と語った。
「東京2020パラリンピックは、多くの障がいのある人が、みなさんの目に触れる機会になります。われわれ障がい者が存在していて、障がいのない人と何も変わらず生活していることを知ってもらうことが第一だと思っています。相手のことを知らないだけで抵抗感を持つのではなく、まずはわれわれのことを知ってもらいたいですね」
一方、ニコ・カッペル選手は「障がいのある人とない人が融合して暮らせる社会になってほしい」と思いを述べた。
「私のように足が短い人もいれば長い人もいますし、太っている人もいれば痩せている人もいます。人にはそういった違いがありますが、障がいのある人もない人も、融合して過ごせる社会になっていければと思います」
存在を知ってもらい、障がいのある人とない人が融合して暮らせること。これがパラリンピアンが願う、パラリンピック後の東京の姿だ。
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