――投資や会計、簿記について「すぐ分かる」などとうたったノウハウ本は、昔から一定の需要があったように思えます。ただ最近目立つのは、現役の公認会計士が手掛けた『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語』(田中靖浩、日本経済新聞出版社)やRootportさんの今回出された本など、会計や簿記の歴史、生まれた背景に迫るコンテンツです。一見地味なテーマですが、なぜ今世間でニーズがあるのでしょう?
Rootport: 僕は、(お金の)ハウツー本への“不信感”があるのではと思います。「こうすればお金が守れる」と説く本はいっぱい出てますよね。ただ、歴史や経済学のアカデミックな知識にひもづいたハウツー本は少なかったと思います。そういった不信感を持っているような人に手に取ってほしいですね。
ハウツー本は、今この瞬間に必要な知識が身に付くので、全く役に立たないとは思いません。ただ、長い目で見た時に(会計の概念などが)いろんな知識と一緒に脳の中に組み込まれることはないでしょう。会計の知識も、歴史や過去の文学作品などと結び付いて語られれば、記憶に残りやすくなるものです。
――ただ、そういったお金に関する教養の中でも、なぜ今「会計」が特に浮上してきたのでしょうか?
Rootport: 会計とは、「日本で生きる人が日本語を勉強する」ような物だと僕は思います。例えば、明治時代の教科書には簿記の内容も入っていたんですよ。いつの間にか無くなったらしいのですが。今だって、喫茶店でコーヒーを飲んだら(店側の会計では)複式簿記で処理されます。
会計・簿記の知識は世の中の大半で使われているのに、(僕らは)目隠しされた状態で大人になっていた。これは誰もが身に付けるべき物だと思うのです。
そもそも、今自分が(経済的に)「損をしているのか」「得をしているのか」は、簿記の知識無しで正確に説明することはできません。年金問題も、消費増税だって損得は(正確には)分からないでしょうね。
会計とはお金を稼ぐための一番の知識です。経済学を勉強しても、お金はきっと稼げないでしょう。お金稼ぎの“言葉”である簿記を学ばなくてはいけないと、みんな気付いたのではないでしょうか。
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