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» 2019年10月08日 05時00分 公開

現地取材で覚えた「違和感」:静岡県知事の「リニア妨害」 県内からも不満噴出の衝撃【後編】 (1/5)

静岡県が大井川の減水問題などを理由に、リニア中央新幹線の建設工事に「待った」をかけ続けている。なぜ静岡県知事はリニア建設を「妨害」するのか? 現地取材で浮かび上がった実態を前後編でお届けする後編。

[河崎貴一,ITmedia]

編集部より:連載「検証・リニア静岡問題」の予告編「リニアを阻む静岡県が知られたくない「田代ダム」の不都合な真実 」は大きな反響がありました。筆者の現地取材を報じた【静岡県知事の「リニア妨害」 県内からも不満噴出の衝撃【前編】】に続き、今回は「後編」として静岡県への書面取材の結果を詳報いたします。 

photo リニア中央新幹線(ITmedia ビジネスオンライン編集部撮影)

 静岡県には、「新幹線新駅関連調査費」という不思議な予算がある。東海道新幹線の新駅を、牧之原台地にある富士山静岡空港(牧之原市・島田市)の近くに新設することを想定した調査費である。

 2016年度には、10億円の予算を計上し、その後も毎年500万円が盛り込まれた。19年度も新駅の利点を検証するためとして、500万円の予算がついている。

photo 富士山静岡空港の直下にある牧之原第一トンネルから出てきたのぞみは茶畑の中を走る

川勝知事が突然口にした「湧水の全量戻し」

 静岡県は、以前から空港新駅について検討していたが、リニア中央新幹線計画が動き出してから、同プロジェクトを意識した動きをするようになった。

 14年に、品川・名古屋間の工事実施計画が認可されると、静岡県はリニア新幹線の開通後、空港近くに新駅を建設する可能性についての本格的な検討を始めた。翌15年には、同県の有識者検討委員会が空港の西側約700メートルに新駅を造る案を作成。16年には、新駅の着工に備えて、前述のように10億円の予算を組んでいる。

 この間、JR東海側は新駅建設の可能性を一貫して否定している。そのため、10億円の16年度予算は1円も使われることはなかった。

 まさにその16年度末(17年3月)、大井川の利水者がJR東海に基本協定締結を要望して、南アルプストンネル静岡工区の工事が始まろうとした。すると直後の4月、川勝平太・静岡県知事は、「(湧水の)全量を恒久的かつ確実に戻すことを早期に表明(すること)」と意見を述べて、「湧水の全量戻し」を口にし始めた。その後、県、利水者、JR東海の三者間で基本協定案の大筋合意に至った10月に、突然強い口調でJR東海を批判し始めた。その結果、締結直前の基本協定は覆されたのである。

 それでも、毎年続けて500万円の調査費を組んでいるのは、新幹線新駅を切望する静岡県の並々ならぬ思いがうかがえる。

 なぜ、これほどまでに、新幹線新駅にこだわるのだろうか。

photo 富士山静岡空港のターミナルビル。この直下を東海道新幹線が走っている

 空港新駅について、静岡県議会で川勝知事を追及したのが、桜井勝郎県議(元島田市長)だ。平成30(2018)年12月静岡県議会定例会(12月7日)の一般質問で、次のように発言している。

 「最近知事はトンネル工事で発生する湧水を全量戻す件でJR東海を糾弾していますが、(中略)日ごろからJR東海には空港新駅に対するつれない対応にふんまんやる方ない知事は、その怒りをトンネル工事による湧水にぶつけたのであります。水を武器にして関連する世論を味方につけ、言いたい放題であります。

 昨年(2017年)10月10日の定例記者会見であなたはこうおっしゃっております。『この工事によって、地域振興なり地域のメリットがあるかについて基本的な考えのないまま勝手にトンネルを堀りなさんな』」(「本会議会議録」より)

photo 桜井勝郎・静岡県議会議員
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