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36歳ロスジェネ女子がはまった“やりがい搾取”に見る日本企業の闇新連載「ロスジェネ女子の就職サバイバル」(3/4 ページ)

» 2019年10月11日 08時00分 公開
[菅野久美子ITmedia]

「男と変わらない給料、ありがたく思え」

 いよいよ紙媒体の末期感を感じた涼子さんは、31歳の時にWeb媒体へ転職。「紙媒体出身者歓迎」と求人サイトに書いてあったあるオウンドメディアに、ディレクターとして転職した。

 条件は正社員で年俸400万。ようやく金銭的にはまともな生活が送れると思っていた。しかし、そこでは別の地獄が待っていた。

 「そこは、女性は上長と“親密な関係”にならなければ出世できない会社と言われていました。だけど、それだけじゃない。さらに仕事も鬼のようにこなさないといけない。ダブルコンボで頑張らないと猛烈ないじめに遭うんです」

 涼子さんは、「その気がない」という態度を示した途端に社内でいじめの対象になった。「いきなり、新規サイトを3日で作れと無理難題言われましたね。どう考えても無理なんです。最初は全く分からなかったから、3日3晩徹夜してやれる範囲でやったんです。でも、やっぱり無理ですといったら、あっそーみたいな態度をされました。1週間の制作スケジュールを勝手に決められるんです。その通りにいかなったらみんなの前に立たされて、押した理由を話させられる。どうやっても絶対無理なんですよ。私を詰められる言葉だけが響いているんです。あれはまさにリンチだったと思います」

 全員参加が強制の月1飲み会では、朝まで飲み屋をハシゴさせられた。朝方タクシーに乗せられて、上長のセクハラの餌食になりかけたこともある。1日12時間以上働き、土日も仕事の勉強をしなければ追い付かなかった。

 「おかしいと思ってたけど、webに移って初めての会社だから2年は勤めないと転職に不利になるからと、耐えましたね。他の会社をよく知らないので、「webってこんな感じなのか」と無理に自分を納得させてました。デザイナーの女の子に『もう大丈夫ですよ、柴田さんってなんか考えたりしなくて』と、大きい声で言われたり、散々いじめられました」

 出版社時代は確かに給料は安かったが、そんな非人間的な扱いをされたことはない。「女なのに男と変わらない給料もらってるんだから、ありがたく思え」と上長に言われたときは、泣きそうになった。会社で涙をこらえて、家で1人で泣いた。

 「長く働くにつれて怒られることはなくなりましたけど、他の子がいじめられるようになった。ターゲットがコロコロ変わるんです。いじめられてみんな辞めていく。だから入れ替わりが激しくて、毎月誰か辞めてましたね」

 社内の男尊女卑もすさまじかった。毎週末に女性社員だけオフィスの掃除をしなければならないという理不尽極まりない慣習があったのだ。「一番嫌だったのは、男子トイレも女性社員が掃除しなきゃいけないことです。小便器を必死にブラシでこすったりして、泣きたくなりました。私たちが掃除している時間、男性の社員は、忙しいふりをして見て見ぬふりなんです。仕事量も責任も全部一緒なのに、女性というだけで掃除させられることに本当に腹が立ちました」

 なぜこんなことをしなきゃいけないのか。おかしいと思うが、ロスジェネ独特の「社畜体質」が染みついていたため、そう簡単に転職できなかった。

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