結局、涼子さんはその会社を2年間耐え抜き、その後、いくつかの会社に転職をして、現職に。ふと周りを見渡すと、売り手市場になっていた。マネジメント職となった現在では、上の世代にも下の世代にも複雑な心境を抱く日々を送っている。
「今の若い子や上をみて、うらやましいと思うんですよね。今の新卒はとにかく褒めないと、すぐに来なくなるから変に気を遣うし、上の世代はボーナスが立つとか、内定祝いでディズニ―ランド行ったとか、伝説がいっぱい残ってるじゃないですか。会社に這ってでも行って、貯金もできなかった私たちの世代ってなんだったんだろう…って」。そう言って、涼子さんはガックリと肩を落とした。
就職氷河期は、男女関係なく多くのロスジェネ世代のキャリアに深い影を落とした。当時、日本企業は不景気で経営が悪化すると、既存社員の人件費・人員削減よりむしろ、「入り口」である新卒採用を激減させることでつじつまを合わせた。終身雇用維持のためだ。また、「女性が働くことの不利」が今よりはるかに残っていた時期でもある。
厳しい就職事情に加えて「やりがい搾取」で厳しい就労環境を強いられた涼子さんの苦悩は、景気の動向次第で誰にでも降りかかる普遍的な問題だ。ロスジェネ女子の訴えは、空前の売り手市場の中で忘れられがちな、日本企業のはらむ本質的な課題を投げ掛けている。
筆者よりお知らせ :今回スタートする新連載「ロスジェネ女子の就職サバイバル」では、実際に就職やキャリア遍歴で苦労や悩みを抱えたロスジェネ世代(1970年〜1982年生まれ)の女性で、お話を伺える方を募集しております。lossgenesearch@gmail.comまでお寄せいただければ幸いです。
菅野久美子(かんの くみこ)
フリーライター。1982年宮崎県生まれ。大阪芸術大学卒。出版社の編集者を経て2005年から現職。孤独死や性にまつわる記事を多数執筆。著書に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)など。
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