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ホリエモンが語る「修業期間」を真っ先に捨てるべき、これだけの理由――職人ではなく「経営者」になれ堀江貴文の『捨て本』【後編】(2/5 ページ)

» 2019年10月28日 05時00分 公開
[堀江 貴文ITmedia]
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学校で学んだだけの寿司屋がミシュラン掲載

 おいしい寿司のつくり方は、YouTubeで公開されている。それをちゃんと真似れば、数十年修業した腕前と、ほとんど変わらないレベルの寿司を数カ月で握れるようになる。海原雄山のような食通が相手でもない限り、絶対バレない。短期間で料理法を教えてくれる学校や料理教室だって存在する。 

 僕がそう言い始めたら、古い料理界から憤慨され、大反論された。で、実際はどうだろう。寿司屋での修業は一切せずに、寿司学校で学んだ経験だけのオーナーが開店した寿司屋が、いまではミシュランに掲載されているのだ。味と修業期間の長さは、比例しない。 「うまい寿司を握るには、人生を削り取る必要がある」なんていう、犠牲を礼賛する考え方が、根強く固定化してしまっているのは問題だ。

 寿司屋の修業はまず、閉鎖的すぎる。師匠は、弟子になった者にだけ味の秘密を伝え、ときには「盗むもの」だと、教えることもしない。肝心の秘密とは、包丁の角度を変えるとか、味つけに何かの調味料を決まった量だけ足すとか、はっきりいって「コツ」レベルの知識。そんなもの、数秒で教えてやればいいのに! と思う。

 僕が育ったインターネットの世界は、まったく逆の開放的な世界だった。システムを構築するプログラムは、ほとんどオープンソースで公開されていた。それらを若いエンジニアが勝手に書き直し、バージョンアップしていった。バグもセキュリティホールも、よってたかって改良した。

 職人の世界で言う“秘伝”を、みんなが自由に共有できた。誰でも使えるから改良は早く、新しい技術が、ものすごいスピードで次々につくられていった。だからこそほんの数年で、世界の隅々まで広がったのだ。

 みんながスマホを手に持っている時代に、閉鎖的な修業を強いるような仕事場は、完全に終わっている。何年も時間をかけないと得られないスキルなんて、世の中にほとんど存在しない。要は、苦労した上の世代が、「時間をかけないと上達しない」というポジショントークで、既得権を守るための勝手な“修業”なのだ。

phot みんながスマホを手に持っている時代に、閉鎖的な修業を強いるような仕事場は“オワコン”だ(写真提供:ゲッティイメージズ)

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