失敗続きの「地域活性化」に財務省がテコ入れ 他省庁との違いを示せるか新連載・地域ビジネス、ここがカギ(2/4 ページ)

» 2019年11月05日 07時00分 公開
[甲斐誠ITmedia]

「旧日本軍の遺産ツアー」「廃校舎で食用花栽培」各地で動き

 旧日本軍の地下壕、火薬庫の見学はいかが――。

 省内業務の日ごろの上意下達ぶりから「軍隊組織」と評される財務省だけあって、事務方トップのお墨付きが出ると圧倒的なスピードで組織が回り出す。かつて鎮守府が置かれた京都府舞鶴市では、旧日本軍の遺産を見学するツアーで地元を盛り上げるプランを京都財務事務所舞鶴出張所が企画している。

 市内には旧海軍の関連施設が点在しており、16年には一部が文化庁の「日本遺産」に認定された。順調に進めば、見学者がこれまで立ち入りの難しかった国有地などに足を踏み入れ、近代遺産を満喫するツアーが楽しめるようになる。

京都府舞鶴市に残る赤れんが倉庫(舞鶴旧鎮守府倉庫施設)

 埼玉県では、秩父地域の4町(横瀬、皆野、長瀞、小鹿野)で、関東財務局の若手が地元関係者と意見交換しながら、地域活性化策を模索。3月には、秩父の自然を生かしたアウトドアレジャーのてこ入れや、冬場の観光客呼び込みに向けた温泉施設の整備など、具体的な施策を4町の町長にそれぞれ提言した。

 地元財務事務所の若手職員が主体となった取り組みは山梨県や京都府でも進む。両地域では、スタートアップ企業の育成に向けた取り組みを計画中だ。また、東海財務局では名古屋城周辺の公有地を名古屋市に貸し出すなど、地域に応じた多彩な試みが行われている。

 財務省の出先機関は、地域に関わる人たちをつなぐ役割も担っている。四国では、19年2月、財務局が中心となって、公務員や会社員、NPO関係者、大学生ら約100人を集めてフリーディスカッションを実施した。まだアイデアを語り合うだけの段階だが、将来的には良い案が出ると期待される。

 さらに、進捗(しんちょく)著しいのが徳島財務事務所だ。既に、食用花の栽培に向けた独自アイデアの実現に向けて走り出している。パンジーやマリーゴールドは食用花として高級フレンチなどの彩りとして使われるが、日本ではまだなじみが薄く、市場は今後拡大すると判断した。地元の廃校舎などで食用花を栽培するスタートアップ企業を、地域金融機関の出資によって立ち上げる計画を準備中だ。商品開発に向けた調査結果を発表するシンポジウムを19年2月に開催。地元の徳島県吉野川市が中心となり、具体化に向けた協議を進めている。

食用花は日本ではまだなじみが薄い(写真提供:ゲッティイメージズ)

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