カネがなければ諦めろ? “身の丈”に合わせる英語民間試験導入は廃止すべき理由河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)

» 2019年11月08日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 教育を受ける機会、仲間と学ぶ機会、友達と遊ぶ機会、知識を広げる機会、スポーツや余暇に関わる機会、家族の思い出を作る機会、親と接する機会……といった経験を積む中で、私たちは、80年以上の人生を生き抜く「リソース」を獲得します。

 ところが、低所得世帯の子どもはそういった機会を経験できず、進学する機会、仕事に就く機会、結婚する機会など、「機会略奪のスパイラル」に入り込み、「貧困の連鎖」を拡大させる大きなリスクになります。

子どものころからのさまざまな経験が「生きる力」になる

 少々専門的な話になりますが、リソースは、専門用語ではGRRs(Generalized Resistance Resources=汎抵抗資源)と呼ばれ、世の中にあまねく存在するストレッサー(ストレスの原因)の回避、処理に役立つものを意味し、ウェルビーイング(個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態)を高める役目を担っています。

 「Generalize=普遍的」という単語が用いられる背景には、「ある特定のストレッサーにのみ有効なリソースではない」という意味合いと、「あらゆるストレッサーにあらがうための共通のリソース」という意味合いが込められている。平たく言い換えれば、「いくつもの豊富なリソースを持ち、首尾よく獲得していくことが重要」なのです。

 リソースは、遺伝や免疫などといった生物学的なものに始まり、おカネ、体力、住居、衣類、食事、権力、地位、サービスの利用可能性、あるいは、知識や知性、知力。特に人間関係は重要なリソースで、社会や地域とのかかわり、友人・知人・家族などからのサポートも有力なリソースです。

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