そんな中、佐川急便やヤマト運輸、日本郵便などの大手も、先述通り、台風の進路に当たる一部地域への集荷や配送の休止・遅延を事前に発表。各大手メーカーの自社便も相次いで配送を休止し、台風に備えた。
「止まれば国の経済が止まる」とも言われる物流において、大手の事前の一部サービス休止の発表は、一般家庭のみならず、業界全体をも驚かせるものとなった。
ところが、こうした大手企業による「休止ムード」の裏で、筆者が運輸の現場で取材したところ、「あの日、台風の中ハンドルを握っていた」と証言するトラックドライバーは実は少なくなかった。その声の主のほとんどは、中小零細の運送会社に所属するドライバーだ。
台風当日、大阪から東北方面に一般貨物を運んだ男性ドライバーは「荷物が軽かったから風に煽られた。高速は止まっているし、下道(一般道)の状況が不明確だったのは不安だった」と話す。
関東エリア内で即席めんを配送した男性ドライバーは「(台風当日は)道路が部分的に冠水していて危険な状態だった。運転手の生命よりメーカーからの指示の方が大事なのか」と憤る。
トラックはその車体の構造上、乗用車以上に横からの風を受けやすく、道路に出ればいつ横転してもおかしくない。また、タンクローリーなどの場合は、移送物が毒物や高圧ガス、危険物であることもある。そんなトラックが事故を起こせば、トラックドライバーだけでなく、周囲の道路使用者をも危険にさらすことになるのは想像に難くない。
台風15号の際、やはり実際にタンクローリーでガソリンや軽油を移送していたあるドライバーは「出社直後にとんでもない強風が吹いていたため、運転に危険を感じた。会社からはサービスエリアへの一時避難を勧められたものの、移送中止の連絡は来なかった」と、その現状を訴えた。
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