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» 2019年11月08日 08時00分 公開

下請け構造、給与に根深い問題:「台風19号でもトラックの中止連絡無かった」――走り続けた零細物流が陥る“負の業界構造”とは (4/5)

[橋本愛喜,ITmedia]

「客の立場に立って考えろ」叱責も

 一方で、今回のような荒天時を、「稼ぎ時だ」と考える運送業者が存在するのもまた事実だ。

 ドライバーが所属する中小零細運送企業の中には、荷主や元請けに何を言われようとも、自社のドライバーの身を危険にさらさぬよう、休業を決めた会社も多くある。しかし、その一方で、台風のような有事の際に跳ね上がる運賃に引き込まれ、「周囲の競合他社が休んでいる今がチャンスだ」と、ドライバーを出す下請け業者も存在する。

 実際、前出の運行管理者の場合、荒天を理由にトラックの配車を止めようとすると、会社から「客の立場に立って考えろ」と叱責されることがあるという。今回の台風でも、社長から「客に(配送を)止めるとばかり言うと、信頼がなくなる」と、注意を受けたという。

 こうした業界構造の中、下請け企業も末端のほうにいくと、所属するドライバー自身の考え方にも違いが出る。「たとえ荒天でも走りたい」という声が出るのだ。

 台風19号の際にも、「台風でも仕事をくれるからうれしい。大雪に比べたら、台風くらいどうってことない」と話すドライバー(関東地方配送の男性ドライバー)の証言があった。

 この言葉の裏にあるのが、彼らの厳しい給与形態だ。

「休んだ分給与が減る」ドライバーの苦境

 貨物輸送や建築・土木の現場を担うトラックドライバーの多くの給与形態は、「日給+手当て」が基本の「日給月給制」で、欠勤の有無に関係なく月当たりの固定額が支払われる「月給制」とは異なり、仕事がない日は、給与は原則支払われない。

 余談になるが、昨今の大型連休の増加も、彼らにとっては疲れた体を休ませる機会になれど、素直に喜べない時流と言える。同じく、このような災害が発生するたびに仕事がキャンセルになれば、ただでさえ薄給と言われるドライバーの暮らしは、より不安定なものになるのだ。

 こうした状況に対して、前出の運行管理者は「平常時から適正な運賃を荷主からもらい、ドライバーに妥当な額を還元できていれば、こんな危ない時に仕事をする必要はない。業界には、『台風くらいならなんとかなる』という風潮がまだ根強い」と嘆いていた。

 現在、トラックドライバーの安全を確保するべく、トラック協会などではトラックの計画運休の検討も話し合われている。ただ、災害時にべらぼうに高い運賃で「なんとか行ってくれ」と頼んでくる荷主がいる以上、一部の業者の強引な抜け駆けはなくならず、運送業全体の足並みがいつまでたってもそろわない。

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