ヤリスの発表会の時、筆者はトヨタのBセグメントが良くなれば、世界のベーシックカーが変わる可能性があると書いた(関連記事参照)。幸いなことにその予想は外れなかった。ヤリスはおそらく20年代の小型車の新基準となりそうだ。トヨタが本気を出すと、これだけのものに仕上がるのだと、今は強く感じている。
シートについては、今回路面が平らで横Gばかり強い特殊なシチュエーションなので、市街地での確認がぜひとも必要。もちろんサーキットでの横方向サポートはプアそのものだが、用途を考えればそれで当たり前。本当の価値は後日レポートする
しかしながら本当の実力を最終的に確信するためには、一般道を他のクルマに混じってしっかり走ってみる必要がある。特に周辺交通に邪魔されながら、全く思いもしないタイミングで減速させられた時の挙動や、時速30キロから50キロ程度で、路側帯の白線のタイヤ1本内側を、美しいラインでトレースしながら走れるかなど、試してみないと分からないポイントはまだ多々あるのだ。
筆者がそう言ったときのトヨタのエンジニア達の口ぶりは、「是非、それをチェックして下さい。今回一番力を入れたのはそこなのです」だそうだ。彼らの言葉だけでなく、今回のサーキットでの印象でいえばおそらくは裏切られることはなさそうに思える。凄いクルマが現れたものだ。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。
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