さて、これまで、Bセグメントで何を買うかと聞かれたら、マツダ・デミオ(Mazda2)かスズキ・スイフトと答えてきたし、正直なところそれ以外は多少の差はあれど「止めておいたら?」という水準だった。しかしその中でもトヨタはどん尻を争う体たらくだったのだ。
HV(ハイブリッド)のBセグメントということでいえば、ヤリスのHVモデルは、現行アクアとガチでぶつかる。しかも全く勝負にならない。全ての項目で大差を付けて、ヤリスの大勝。かろうじて勝負になるとすれば、唯一、GRが手を入れたコンプリートカー、アクアGR SPORTだけだろう。あれはもうアクアとしては段違いに素晴らしかったが、正札も237万円。しかしそれですらお里は隠しきれない。サーキットでのタイムはともかく、トータルではヤリスの勝利は揺るがない。
まずシャシーが圧倒的に硬い。ヴィッツと比べるとヤリスは、同等仕様で比較して50キロの軽量化を遂げながら、ねじり剛性30%向上とのことだ。乗った感じはそれ以上、4つのタイヤの支持剛性がしっかりしているから、どんなに負荷をかけても、あまりタイヤの向きが明後日を向かない。アクアもヴィッツも素のモデルは特にそこが根本的にダメだった。
音振と乗り心地のために、サスペンション回りのゴムブッシュに大きく柔らかい素材を使うので、入れた舵角(だかく)とタイヤの向きに齟齬(そご)が生じる。舵(かじ)を入れたとき、たわみの分だけ遅れて反応が始まり、横力が増えるに連れてたわみ量が拡大して舵角が減ってしまう。脱出に向けて横力が減っていくと、たわみが戻って、今度は切り増したように舵角が増える。そういうクルマは、曲がろうとすると果てしなくだらしないアンダーステアで、もう曲がるのも店じまいとなってからキュッとお釣りのようなモノが来る。あれの正体はブッシュの過大だ。
そこへシャシーの剛性の弱さが加わって、タイヤ接地面の面積と面圧も不規則に変わるので、揺れる吊(つ)り橋の上を歩くように、乗り手の意思や操作と関係ない挙動変化が、過渡域ごとに繰り返し現れるのだ。
ヴィッツのシャシーは、そもそもが2005年デビューの二代目からのキャリーオーバーで、2世代を通じてコストダウン要求が厳しかった時代の遺物である。それでも17年には最終アップデートとして、スポット溶接の増し打ちなどGRが持つノウハウをフィードバックしながら、可能な限りの改善を施して来たのは認めるが、それとて生まれながらの素養を全部打ち消せたわけではない。
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