その不満、買い取ります 日々の“もやもや”を何でも買い取る「不満買取センター」が社会を変える?集まる不満は1日1万件(3/3 ページ)

» 2019年11月11日 11時45分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]
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思わぬところに企画の糸口が

 例えば、ある寝具メーカーでは、こたつの商品企画のために不満を分析。当初、「内部の温度が上がりにくい」「こたつ布団を洗濯しにくい」といった「機能面」に不満があると想定していた。ところが、個々の不満を分析して浮かび上がったのは「家族が布団を引っ張ってずれるのがストレス」という、こたつが家族団らんの場として使われているシーンや、思わぬ不満だった。そこで、こたつ布団がずれないように、テーブルに固定するひもを付けたこたつ布団を企画した。ちょっとした工夫だが、このような意外なニーズやひと工夫が不満によって明らかになる。

 ちなみに、不満買取センターのユーザーは現在40万人を超え、6割ほどを女性が占める。年代別では30〜40代が多いという。「家庭で意思決定を行っている主婦がメインユーザー」と伊藤社長は話す。また、どちらかといえばデジタルにそこまで詳しくない人が多く、いわゆる「マス」的なユーザーが多いことから、大企業の利用が多いという。今後はよりエッジの利いた不満も集めるため、若い年齢層や高齢層も取り込んでいきたい考えだ。

 なお、不満買取センターでは寄せられた不満を通常最低1ポイント、最大10ポイントで「買い取り」しており、ポイントに応じてギフト券と交換できる。買い取りでは、それぞれの不満を「不満ソムリエ」が具体性などをもとにスコアリング。これまでは人力で1件1件を分析していたというが、今ではAIのソムリエが活躍している。

Webサイト上には「正しい不満の書き方」も(出所:不満買取センター公式Webサイト)

不満は期待の裏返し

 気になるのは、ポイント欲しさに適当な不満を大量にアップするユーザーの存在だが、ポイント目当ての人は長続きしない傾向にあるという。それでも1日1万件以上の不満がコンスタントに集積されている。

 日々集められた不満は、商品企画だけでなく行政への活用も始まっている。19年8月には、東京都議会の会派へデータを提供。通常の政治活動だけでは吸い上げられないような小規模の意見でも政治に生かされるような仕組みを構築していく。また、今後は分析用のダッシュボード機能を構築し、SaaS(Software as a Service)化するなどの展開も検討しているという。「不満」と聞くとネガティブな印象を受けるが、伊藤社長はこう話す。「不満は期待の裏返し。期待とのギャップで生まれるもの」。いわゆるサイレントマジョリティーが可視化されていけば、より多様な社会となりそうだ。

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