強い組織を作る人事の技
インタビュー
» 2019年11月12日 08時00分 公開

人材流出企業にならないためにすべきこと:日本企業は社員の「忠誠心」に甘えている 働きがいのある会社、コンカーのトップが警鐘 (1/7)

変化の時代に優秀な人材を確保するために重要なのは「働きがいのある会社」になること――。2年連続で働きがいのある会社ランキングで1位になったコンカーを率いる三村真宗氏に、働きがいのある会社であり続けるための取り組みについて聞いた。

[後藤祥子,ITmedia]

 働きがいのある会社ランキング(100〜999人部門)で2年連続1位、5年連続でベストカンパニー賞を受賞――。三村真宗氏が代表取締役社長を務めるコンカーは、社長自らが「働きがいのある会社であり続けるための取り組み」に注力していることで知られ、働き方改革がうまくいかない企業の社長や人事の相談が後を絶たないという。

 そんなコンカーも、立ち上げ当初は「働きがいのない会社」になってしまったことがあり、「社員同士が協力しない」「疑心暗鬼の空気が広がる」「情報が隠される」といった職場環境に苦しんだことがあると三村氏は振り返る。

 同社はなぜ、働きがいがない状態に陥ってしまったのか、そこからどのようにして「働きがいのある会社」に変わったのか。こうした経験から得た「働きがいのある会社をつくるために必要なこと」とは何なのか――。働きがいのある会社として知られるようになるまでに同社がたどったプロセスを三村氏に聞いた。

Photo コンカーの代表取締役社長を務める三村真宗氏

ミッション、ビジョンの策定で強いチームが誕生

――聞き手:編集部 後藤祥子: コンカーは、働きがいのある会社でありつづけるために、社長自らがその取り組みに深くコミットしていることで知られています。「働きがい」について考えるきっかけになった出来事を教えてください。

三村: 最初のキャリアだったSAPジャパンでの経験がきっかけかもしれません。

 92年の秋に登記されたばかりのSAPジャパンに、数人の立ち上げメンバーの1人として入社したんです。まだ日本にオフィスがなかったので、半年間、独SAP本社に送り込まれて、現地でSAP R/3というERP(Enterprise Resources Planning:企業内の基幹情報を収集し、経営のプランニングを行うこと)製品の日本語化や、機能検証を担当していました。

 当時、ドイツでは既に、働き方改革の取り組みが進んでいて、金曜日の午後になると、オフィスには誰もいないんです。日本人のチームが深夜まで働いているのに対して、ドイツ人のチームはさっさと帰っていましたね。当時は彼らの働き方に違和感を覚えることもありましたが、業績もよく、納期もしっかり守っていたので、「集中して短時間で終わらせる」という、生産性が高い働き方をしていたのだと思います。

 帰国後は、立ち上げメンバーということもあって、とても忙しかったですね。帰宅も22時、23時は当たり前。入社1年目からタクシー帰りの日々でした。

 SAPには13年間在籍して、前半の6年間はエンジニアとして製品の責任者や導入のコンサルタントを担当していました。マネジメント職になったのは後半の7年ですね。働き方や働きがいについて考えるようになったのは、マネジメント職になったことがきっかけでした。

 マネジメント職としての7年間で手掛けたのは、「SAPの売れ筋であるERP以外の製品をいかに売るか」、という土台をつくる仕事でした。BI(Business Intelligence:企業内のデータを集めて分析し、経営に生かすこと)とかCRM(Customer Relationship Management:顧客との関係を管理する仕組み)、HCM(Human Capital Management:人的リソースの管理)といった、新たなツールが出てきたときに、営業、プリセールス、導入、マーケティングのチームを立ち上げて、軌道に乗ったら組織の中に戻す――という仕事の責任者をやっていたんです。

 新しい製品の売り方を設計する仕事ですね。ビジネスモデルの構築からマーケットのセグメンテーション、ターゲティング、製品のバリュープロポジション、メッセージングまでを、いわば社内の独立起業のような形でやっていたわけです。まだ市場がないところに、新たに市場を作っていく仕事ですから、毎日が勉強であり、修行でした。

 この仕事をしているときに、初めて事業のオーナーシップを持つことになったので、改めて経営やマネジメント、リーダーシップについて勉強しようと思ったんです。「ビジョナリー・カンパニー ――時代を超える生存の原則」「ビジョナリー・カンパニー 2 ――飛躍の法則」をはじめ、当時、目に入った書籍を乱読したわけですが、そこに共通して描かれていたのが、「ミッションやビジョン、価値観の共有」だったんです。

 まずは本に書かれている通りにやってみようと思って、自分たちの部署のミッションやビジョンを愚直に定義してみました。

 当時、ERPが日の出の勢いで注目されているところに、BIツールとしてSAP Business Warehouse(以下、BW)という製品が出てきたんです。その時に、「情報系の製品であるBWは、将来、ERPの価値を最大化するために重要な役割を果たす。だからこの製品は、SAPの第2の柱になるんだ」ということを、ビジョンとして掲げたんです。

 するとチームのメンバーが、何かにとりつかれたかのように仕事に熱中しはじめたのです。それには私自身が一番、驚いたのですが、大義に駆動されて、みんなが一生懸命に汗を流す――という状況が始まったんですね。

 よく、組織の問題で一番大きなものは、サイロ化(組織や部門の分断化)だといわれていますが、それを防ぐための特効薬が、「組織の壁を越えた大きな大義」とか、「夢を掲げること」だと分かったのは大きかったですね。それが浸透していると、手近な問題や利害を乗り越えられることを実感しました。

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