強い組織を作る人事の技
インタビュー
» 2019年11月13日 08時00分 公開

「不透明な社内評価」にNO! 報酬は「市場価値」で決める――ベルフェイス社長が人事制度に大なたを振るった理由 (3/5)

[後藤祥子,ITmedia]

部署異動によって報酬が下がるケースへの対応は

田中: 翌年のベルフェイスの戦略上、とても重要なポジションがあるような場合には、純粋な市場価値から鑑みて、少し報酬を高くするようなことがあるのでしょうか。

中島: まだ運用して1年弱くらいなので、今のところはないですが、今後は出てくるかもしれません。

 その意味では、この制度は部署の異動時にも適用されるので、例えばある部署で実績を上げた人間が未経験の職種に異動したら、そこでは初心者という位置付けになるので報酬が下がる可能性があります。

 ただ、そうすると当人のモチベーションが下がってしまうので、対応には細心の注意を払うようにしています。基本的にこの制度で重視しているのは「本人の成長について真剣に考える」というものなので、例えば、「異動先の職種は、まだ世の中ではメジャーではない分、経験を積むことで希少な人材になれる。そうすればおのずと市場価値は上がる」といったコミュニケーションで運用するのが本質だと思っています。

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 当社の場合、多くの異動は、その人の軸となっているキャリアに足し算や掛け算したときに、より高い価値を出せるようにすることをベースに考えているので、極端な異動はほとんどないんです。基本的にはキャリアがちゃんと積み重なっていくようなことを配慮しながら、お互いに納得できるようにしています。

田中: 透明性をもって職種ごとの市場価値で客観的に報酬を決めることを徹底しているからこそ、異動も含めて上司と部下が「将来の価値を高めるキャリアプラン」を真剣に考えるようになる、というのは素晴らしい副次的効果を生み出していると言えますね。

賛否両論の新人事制度、どうやって社内に浸透させたのか

田中: 斬新な制度だけに、社内でさまざまな声が上がったと思うのですが、浸透させるまでにはどんな苦労がありましたか。

中島: 社内では賛否両論ありましたね。実際のところ、納得できない人や不安に思う人も多く、「この制度の意図は何なのか」「バリューの評価とミッション評価がイコールなのはなぜなのか」など、多くの質問が寄せられました。

 でも、社員の声を聞くと、「なるほど、確かにこの視点は抜けていた」と思うことも多いんですよ。だから説明会は、かなりの回数をこなしました。

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田中: 納得してもらえるまで根気よく説明を繰り返すことは、とても大事ですよね。私も以前、務めていた会社で人事制度をゼロから設計して導入したことがあるのですが、制度を設計する側が強い信念を持って「この制度を導入することで、絶対に会社が変わる」と言い続けないと、心が折れるようなこともありますよね。

 「できることなら変わりたくない」というのが人間の“さが”ですから、変革に対して抵抗する人のほうがどうしても多い。そんな中で「この制度は、こんな問題をこのように解決します。それを続けて5年くらい経ったときには、会社がこんな風に変わります」ということを強い気持ちで伝え続けて初めて、だんだん「こいつ、本気だな。信じてみるか」と思ってもらえるようになりました。

中島: 報酬に関わることなので、丁寧な説明が必要でしたね。私自身、この人事施策についても強い信念と自信を持って取り組んでいましたが、それでも相当、大変でしたね。

 まず、全社員に話して、そのあとは質問をしやすいように10人以下のグループで個別説明会を開きました。そのたびに質問を回収しては答えて、「なるほど」と思う意見は反映して。それでも納得できない人たちにはまた、説明の機会を設けました。人事制度改革は決定事項なので、従ってはもらうのですが、そのプロセスは慎重に考えましたね。

田中: 制度の骨子は経営と人事で固めて、変更の余地があるところで、影響力があるリーダークラスの人たちを巻き込むのは非常に重要なプロセスだと考えています。彼らの意見を反映させると、当事者になってくれるので、こちら側に引き入れられる。そうなると、彼らが説明する側に回ってくれるので強いんですよね。そういうこともやっていたのではないでしょうか。

中島: そうですね。それはこの人事施策を展開してみて実感しました。

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