東京モーターショーに出現、「おしゃべりトラック」は運転の世界をどう変えるかクルマと人とのコミュニケーション(4/4 ページ)

» 2019年11月22日 08時00分 公開
[橋本愛喜ITmedia]
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「しゃべるクルマ」に意外なトラブル?

 先述通り、Quon Concept 202Xは本来、「歩行者と車両」とのつながりを意識して開発されたトラックであるため、現在のところリア部分には文字での表示ディスプレイは付けられていなかった。しかし今後、こうした制限を取り払い、「音声」や「文字ディスプレイ」「色」を、道路を走る全てのクルマの前後左右に装着すれば、道路使用者の意思疎通も飛躍的に円滑になるに違いない。

 ただ、こうしたしゃべるトラックを走らせることにあたっては、課題が無いわけでもない。クルマがしゃべれるようになれば、無論さまざまな弊害も生じるだろう。

 特に懸念されるのは、騒音だ。現在、音声アナウンスをする配送トラックにも、実際「うるさい」という苦情が時折出る。当然、クルマが一斉にしゃべるようになれば、今以上に騒音問題が深刻化することは想像に難くない。

 先述通り、Quon Concept 202Xの文字や音声によるガイダンスは、ボタンを押すとあらかじめ設定された定型文のみが表示されるようになっているため、大きなトラブルは起きないとは考えられるものの、ボタンの連打や音量調節などの問題にも配慮せねばならなくなるだろう。実用化されるようになれば、道路脇に「この先発言禁止」「マナーモード(文字表示のみ)」のような標識や、道路交通法による規制も登場するはずだ。

 現在、その精度や実現性を徐々に上げている「自動運転」。将来、AIが道路環境とドライバーの感情を読み取り、定型文に限らずさまざまな言葉をクルマにしゃべらせられれば、80年代に「夢のようなクルマ」として一世を風靡した米国の人気ドラマ「ナイトライダー」が道路を行き交う日もそう遠くはないのかもしれない。

 が、いずれにしても道路が完全自走するクルマに様変わりしない限り、今後よりよい道路環境を構築するのは、どれほどテクノロジーが進歩しようとも、最終的には「クルマ」ではなく中身の「人間」であることを忘れてはならない。

著者プロフィール

橋本愛喜(はしもと あいき)

大阪府出身。大学卒業後、金型関連工場の2代目として職人育成や品質管理などに従事。その傍ら、非常勤の日本語教師として60カ国4000人の留学生や駐在員と交流を持つ。米国・ニューヨークに拠点を移し、某テレビ局内で報道の現場に身を置きながら、マイノリティーにフィーチャーしたドキュメンタリー記事の執筆を開始。現在は日米韓を行き来し、国際文化差異から中小零細企業の労働問題、IT関連記事まで幅広く執筆中。


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