武藤部長に前職との意思決定方法の違いを聞くと「少人数で若手に任せる形でやっているので、提案があってから製品になるまでがスピーディーだ」という。意見が食い違った場合の対応については「これまで(東芝で)外資企業や協力会社と製品開発のたびに意見をぶつけ合い、コミュニケーションを取ってきたので慣れている」と話し、「混成部隊」をまとめていく上でもマネジメントができる自信を示した。
アイリスでは新製品を出す前に、社長や役員などが居並ぶ「プレゼン会議」と称される毎週月曜日開催の新商品開発会議でプレゼンテーションをしなければならない。この場でOKが出なければ製品化はされないのが、この会社のしきたりだ。求められるのは、生活者目線に基づく、機能、デザイン、価格などあらゆる側面からの徹底的な検討であり、厳しいやりとりがされる。このプレゼン会議は同社の大山健太郎会長が社長だった草創期から行われている取り組みで、同社製品のアイデア創出の原点にもなっている。
今回の音声操作付きテレビのアイデアはプレゼン会議で無事に承認された。特に家電後発のアイリスが重視しているのが、既存製品とは異なる「なるほど」機能だ。
武藤部長が30年以上も勤務した前職では当時、新製品開発のアイデアが提案されても、製品化のゴーサインが出るまでにはいくつかの部門で承認を得る「稟議(りんぎ)」という日本企業独特の手続きが必要になっていた。ある大手企業の技術者は「稟議に時間がかかってしまうだけでなく、技術者のとがったアイデアも上の承認を経るうちに角が取れてしまう」と嘆く。
一方アイリスの場合はそうした時間を要する稟議はないようで、プレゼン会議での決定が、最も重視されるようだ。このため、製品化までの期間が短く、中途入社の開発担当者にとってもモチベーション向上につながるというわけだ。
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