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売れる店と売れない店は何が違うのか――データだけでは分からない「両者を分かつもの」長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」(2/3 ページ)

» 2019年12月04日 08時00分 公開
[酒井真弓ITmedia]

「自走する部下」を育てるコミュニケーション術

柳瀬: コーチングのフレームワークに、「自分の言葉で考える」というのがあるんです。人間の意識や思考を変えようと思ったら、質問をすると良い。「こうしましょう」というより、「こうするにはどうすればいいと思う?」と聞いたほうが、聞かれた方の意識の中で関与する度合いが上がるらしいんです。

 質問されると、どうしても考えちゃうんですよね。先日も長谷川さんに「柳瀬さんって不思議ちゃんだよね」と言わたんですけど、僕はどうして不思議ちゃんなのか、それをどう説明すれば伝わるのか、ずっと考えちゃうんですよね。

長谷川: 何げなく発した言葉で悩ませてしまったようで、ごめんなさい(笑)。

柳瀬: 何か答えた後も、ずっと考えちゃうんですよね。「あのとき、あんな風に答えたけれど、あれで本当に良かったのかな」って余韻がずっと残るんです。「こうしましょう」「はい」だと、意識が断ち切れてスパッと忘れちゃうんですけど。

長谷川: 確かに、「こうしましょう」だと命令されたみたいだけど、「こうするにはどうしたらよいと思いますか?」という問いかけだと、聞かれた方にオーナーシップが生まれそうですね。

柳瀬: 質問するようになってから、社員とのコミュニケーションが取りやすくなったんですよね。それまで「こうしましょう」と言うと、「はい、分かりました」という返事しか返ってこなくて、やりづらさを感じていたのですが、「こうするにはどうしたら良いと思いますか?」「何かアイデアはありますか?」だと僕も話しやすい。強制じゃないし、社長としてのポジショントークで終わらないから。

 それに質問すると、すごくいいアイデアが出てきたりするんですよ。僕が思い付きもしないような発想が出てきたりする。ちょっと違うな、と思っても、「それは違うんじゃないの」と言うのではなく、「なぜそう思うの?」「他にもアイデアはないですか?」と、あえてスルーして議論を深めてみるとかね。

思考の枠を広げるコミュニケーション法

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長谷川: 一方的にしゃべって終わりっていう上司もいますよね。部下もそれを「はいはい」と聞いているだけ、みたいな。

柳瀬: それだとコミュニケーションがとれていない感じがするじゃないですか。長谷川さんは、例えば1on1(上司が部下を育成するために行う個人面談)のとき、部下とどんな話をしているんですか?

長谷川: その人それぞれだね。あまりこれを話そうとか気負って考えてないかな。沈黙も良しとするみたいな。試験じゃないんだから、偽りの自分が出てきて話すよりも、素のままでよくない? と思うわけです。

柳瀬: コーチングの先生に質問のコツを教えてもらったんですけど、サッカーで言うと、逆サイドにパスするようなものなんですって。意識がこの話に向いてるなと思ったら、そこを掘り下げるのではなく、わざと別の話をするんです。そうすることで思考の枠が広がって、視野が広がっていく。それを常に意識しながら質問を投げかけるんですって。

長谷川: メンタリストみたいやね。例えば仕事の話を聞こうと思ったら、家庭の話から入ってみるとか?

柳瀬: そうそう。全然関係ないスポーツの話をしてみたりとか。違う話をしても、根っこにある価値観は同じなのでつじつまが合って、元の議論を深めることになるんです。

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