京都勝牛は“牛カツ戦争”を制するか 焼き肉とステーキを経てたどり着いたビジネスモデルに迫る長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)

» 2019年12月04日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

焼き肉やステーキを経てたどり着いたビジネスモデル

 ゴリップは2006年、韓国風豚バラ肉の焼き肉「サムギョプサル」専門店の「ベジテジや」ブランドを京都市伏見区で立ち上げ、当時のドラマ「冬のソナタ」を頂点とする韓流ブームに乗って順調に成長。一時期は全国で21店を展開していた。

 創業者の勝山昭氏は7年間韓国で貿易の事業を営んでいたことがあり、在韓中は韓国の国民食とされる好物のサムギョプサルを毎日のように食べ歩いていた。そうした勝山氏の体験に基づいた本物の味と、既存の焼き肉店と一線を画すカフェ風の明るい店舗、サンチュをはじめとするさまざまな野菜とチーズとのトッピングで肉を包む食べ方の提案が受けた。

ゴリップのサムギョプサル専門店、ベジテジや

 しかし、しかし、1万通り以上ある包み方を提案するなど同業他社とは一線を画す業態開発を行ったにもかかわらず、韓流ブームの終息に巻き込まれて次第に失速し、「単一ブランドに頼るリスクの大きさを痛感した」と洪氏はしみじみと語る。

 ぼうぜんとしていたゴリップの社員に、これから赤身の熟成肉のブームが来ると食肉メーカーからの提案があり、主力業態をミドルクラスのステーキレストランに転換。14年に「ゴッチーズビーフ」という顧客単価4000〜5000円の熟成牛ステーキ業態を新たに開発。赤身の肉がヘルシーだという風潮に乗って、転換した1店当たりの売り上げが倍増し、ベジテジやに劣らぬヒットとなった。お店の厨房で8割を焼き上げ、残りを顧客が席で仕上げるシステムで、ベジテジやの焼肉用テーブルを生かした。

 しかしゴッチーズビーフは、本格的なステーキレストランとしては安価だがそうそう何度も行ける価格ではない。そこで勝山氏の「トンカツはあるのに、なぜ牛カツはないのだろう」という疑問から、もっと日常的に牛肉を楽しんでもらいたいと考案されたのが、ステーキをカツにしたかような牛カツだった。

牛カツのおいしい食べ方

牛カツはどこまで伸びるか

 京都勝牛が商材とする牛カツは、和食のスタンダードとして定着できるだけの潜在的な市場があると目される。しかし、一方でまだ牛カツを食べたことがない消費者も数多く存在する。トンカツはスーパーでも普通に売っているが、牛カツは売っていない。牛カツは普及段階にあり、大きな可能性を秘めている。牛カツはトンカツと比べても、衣が薄くて脂身が少なくヘルシー感があり、食感があっさりしていて日本のだし文化にも適合しているからだ。

 外国人からの受けも良く、京都勝牛の京都にある店はどこもインバウンドの顧客で賑わっている。進出した台湾では、現地のランキングサイトで、台湾に進出している海外の外食ブランドのカテゴリーで2位に入るほどの好評ぶりだ。

 洪氏は「まだまだブラッシュアップしなければならない箇所がたくさん残っている。ご飯の炊き方1つとっても改良の余地がある。お客さまの層を広げるために、アナゴのカツやエビフライをメニューに加えた。ビジネス街でも、利用機会を広げるために、串カツを夜のメニューに入れていきたい」と語る。京都勝牛はさらなる進化に秘策ありと見受けられた。

 ゴリップが重視するのは、お店でなければ体験できない価値のある消費。価値の最大化を目指し、改善にはゴールがないとしている。今の成功に酔わないさらなる高みを目指している。

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