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» 2019年12月04日 05時00分 公開

マシリトが行く!【前編】:『ジャンプ』伝説の編集長が、『ドラゴンボール』のゲーム化で断ち切った「クソゲーを生む悪循環」 (3/5)

[伊藤誠之介,ITmedia]

20代だったマシリトが「業界標準」を作った

鵜之澤氏: 本当に小さなスペースでやってまして。それでバンダイのゲームは自分でもたまに手を出して痛い目を見ていたので、(社内の人間に)「なんでクソゲーができるの?」と聞いてみたら、いろんな言い訳が出てくるんです。

phot 268億円の損失を返上し「A級戦犯」から「英雄」に上り詰めた鵜之澤氏

 まず1つは、企画書を書いて発売日を決めたら、それが絶対だと。でも普通はだいたい、途中で遅れますよね。それでも納期は絶対なので、仕様をカットしていたんです。しょうがないんで仕様を落とすということをどんどんやっているうちに、誰も100パーセントの完成度を目指せなくなってしまう。70点ぐらいで仕上げちゃう、みたいなことがすごくあって。クソゲーができる理由は、簡単に言うとそれなんだなと。

 自分は以前、バンダイビジュアルでアニメのプロデューサーをやっていたので、モノ作りはなんとなく分かっていましたから。じゃあ、納期に関しては責任者の自分がガマンをするから、ちゃんとした100点まで作ってねというのが、まず1つできること。

 あとは“やっちゃいけない伝説”という、謎の伝説がいっぱいあったんです。例えばその当時、「『ガンダム』はWebでゲーム動画を流しちゃいけない」と言われていたんですよ。でも僕は『ガンダム』の版元の社長もよく知っているので、「そんなことを誰が言ってるんですか?」と聞きに行くと、「そんなこと言ってません」と。

 そんな感じで『ジャンプ』にも“やっちゃいけない伝説”があるんです。やっぱり『ジャンプ』は怖いので。そりゃ怖いですよね、この人(鳥嶋氏)が責任者なんですから(笑)。

phot 当時の『ジャンプ』の“責任者”ことマシリト

 1999年はちょうど『ONE PIECE』のTVアニメが始まって。『ONE PIECE』のゲームの企画を、中途入社の田中良也という社員が立てたんですが、彼は怖いものがないんですよ。新入社員でよく知らないから。その彼が、『ONE PIECE グランドバトル!』という初代PSのゲームで、キャラクターをデフォルメしたんです。原作のキャラを2頭身に変えたんですね。でもバンダイに昔からいる先輩たちは、「あり得ない」って言うんです。「勝手に変えたら集英社に殺されます」と(笑)。

 でも自分はその2頭身のキャラをかわいいと思ったし、その一方で、誰も集英社の編集部の人に会ったことがない。というのは、僕らは東映アニメーションさんから権利許諾をいただくんですね。アニメのゲーム化なので。なので『ジャンプ』の編集者や、ここにいるボス(鳥嶋氏)とは会えないんです。

phot 『ONE PIECE グランドバトル!』(Amazonより)

 でも僕は、昔から鳥嶋さんと知り合いだったので、中野坂上の事務所に鳥嶋さんを呼びつけて。それでウチのプロデューサー連中から『ジャンプ』物の企画をいくつか提案させてもらうと、その場で鳥嶋さんが判断してくれて。その『ONE PIECE』のデフォルメしたキャラも「別に良いんじゃない」と一言で終わるっていう。

 つまり“やっちゃいけない伝説”がノウハウという言葉に置き換えられて、「お前、そんなことも知らないのか」という蓄積が、その当時のバンダイのゲーム部門だったんですね。

 その“やっちゃいけない伝説”を解放してあげたら……まぁ、良いゲームができたかというのはみなさんの判断もありますし、たまには自分で見ても「イタいな」っていうものもあるんですけど。ただ、そういう制約を外したら、同じメンバーでメキメキと売り上げを伸ばしまして。僕は6年ぐらいでさっき言った268億円の損失を、ビデオゲーム事業で返しましたからね(会場拍手)。

内山氏: こんなに盛り上がって大丈夫かな。まだ本題に入る前ですよ(笑)。

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