長さ10メートルの“鉄道向け印刷”から未来の自動改札まで 鉄道技術の進化を探る杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

» 2019年12月06日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 他に分岐器用PCまくらぎも展示されていた。まくらぎはかつては枕木と書き、木製だった。PCまくらぎはコンクリート製で、耐久性が上がり交換回数も減った。ちなみにPCはプレストレスト・コンクリートの略で、あらかじめ鋼線を仕込み、緊張させて圧縮応力を与えたコンクリートという意味だ。弱点は重量で、分岐器などの長さが必要とする場所には使いにくかった。近年は新素材としてウレタン樹脂とガラス繊維を使った軽量タイプもある。

 大和軌道製造ブースのPCまくらぎ分岐器は、軌道道床との設置をボルトからバネクリップにするなどして枕木の寿命を延ばし、軌道狂いを抑制するなど進化させている。とても地味な話ではあるけれど、鉄道はあらゆる場所で技術が進化している。

分岐器用PCまくらぎ

・軌陸車も進化していた

 初期の鉄道技術展は、保線車両やゆりかもめ新型車両、LRVのモックアップなどもあって楽しかったけれど、今回は鉄道の実物車両はなくて寂しい。もっとも、技術と商品の紹介であれば、実物である必要もないということだろう。鉄道ファン向けではなく、商談会である。

 そんな中で、クルマとして搬入しやすい保線用軌陸車は何台か展示されていた。レンタルのニッケンの大型軌陸車はカゴ付きクレーンを搭載し、鉄橋上からカゴを降ろして橋桁を点検できる。アクティオの軽自動車タイプの新型軌陸車は取り回しもしやすく機動力を感じさせる。アクティオではもうひとつの軌陸車に注目した。車両を線路に載せる機構が面白い。鉄道車輪を車体から引き出す機能が画期的だ。鉄道台車を自在に回転させて線路に載せ、レールを移動させつつ車体をガイドして線路上に誘導する。

 従来の軌陸車は、踏切などに車体を停め、床下に軸を降ろし油圧で車体を持ち上げ、90度回転させて車輪とレールの位置を合わせていた。伊予鉄道の坊っちゃん列車が向きを変えるときのように。それに比べると台車を引き出す方式は位置合わせがしやすい。夜間になりがちな保守作業の手間と時間を短縮できる。

鉄道台車を広範囲に稼働させる軌陸車

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