企業不祥事トレンドは「人口減少型」、2020年はどうなる?スピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2019年12月31日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

破たんをゴマかすために不正

 進めば破滅が待ち構えているのは明らかだが、トップでさえもそれを避ける権限がない。そんな旧日本軍のような組織ができることといえば、「戦果」を偽るしかない。そう、破たんをゴマかすため、見せかけ上の数字の操作などの不正に走るしかないのだ。

 そんな不正の中でも最も手軽で最もバレにくいのが、郵便局に絶大な信頼を寄せる高齢者をダマすことだったというわけだ。

 このような「ビジネスモデル破たんを取り繕うために組織ぐるみで不正へ走る」というパターンは、「24時間営業問題」や「社員による無断発注」に揺れたセブンや、「アパートの不正建築問題」が発覚したレオパレス21もまったく同じである。

 ともに1973年という人口増時代のど真ん中に産声をあげ、急成長をしてきたビジネスモデルなので、あらゆる戦略が「人が増えていく」ことを前提としている。エリア内をセブンのコンビニで塗りつぶしていく「ドミナント戦略」や、「30年間は家賃保障します」というセールストークで、とりあえず土地持ちオーナーにアパートを建てさせる「サブリース契約」なんてのがその象徴だ。

 そんな人口増型成長企業は当然、人口減少に転じれば組織のあちこちから「無理」という悲鳴が上がってくるが、日本郵政と同じで、誰もこの”負け戦”から勇気ある撤退という決断を下すことができなかった。ドミナント戦略はセブンの根幹をなすものだと定めたのは、カリスマ創業者・鈴木敏文氏で、歴代の経営トップはこの路線を踏襲しなくてはいけないという不文律があった。レオパレスも同様で、創業者の深山祐助氏が進めてきた「安くチャチャッと建てられる賃貸アパートをたくさん建ててガッチリ」という大方針に誰も異を唱えることができなかった。

 そういう「無理」に対して絶対権力者が敷いたレールをサラリーマン経営者が踏襲していく思考停止型組織の現場は、とにかく「上」の顔色をうかがうことが最優先されるので、結果さえ出せば多少のルール破りや不正も問題なしというモラルハザードが進行する。それがセブンの場合は、過重労働の黙認や、社員による無断発注であり、レオパレス21の場合は「手抜き工事」だったというわけだ。

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