企業不祥事トレンドは「人口減少型」、2020年はどうなる?スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2019年12月31日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

企業の不祥事を振り返る

 15年には、三井不動産などの「杭打ち不正」問題、東洋ゴムの免震ゴム偽装問題、マクドナルドの異物混入、東芝不正会計問題などが、「現場の疲弊が引き起こした不祥事」が目立った。

 16年もこの現場の暴走という流れは変わらず、三菱自動車のカタログ燃費偽装問題などに加えて、電通の新入社員「過労自裁」問題をきっかけにパワハラや過重労働というブラック企業問題も注目を集めていく。

 17年になると、この2つの要素が合流してさらにパワーアップした不祥事である、「現場の無理をごまかす数の帳尻合わせ」が次々と表沙汰になる。神戸製鋼、東レ、三菱マテリアルなど、ものづくり企業のデータ改ざん問題や、ヤマト運輸の残業代未払い問題などに加えて、年末には日本の安全神話を象徴する新幹線が、台車に亀裂が入ったまま点検をせずに時速300キロで疾走していたという衝撃的な「重大インシデント」も明らかになっている。

 そして、この傾向は18年になるとさらに加速度的に増えていく。はれのひ成人式着物詐欺、スルガ銀行不正融資、スバル、日産など自動車メーカーの品質不正、中央省庁の統計不正や障害者水増し雇用など、「数字の改ざん」は組織運営をしていく上で必要悪という位置付けになっていくのだ。

 このようなトレンドの変遷を振り返ると、近年の企業不祥事が、現場の疲弊が引き起こしているという共通点があることに加えて、その疲弊をもたらす要素が雪だるま式に増えている現実が見えてくる。そのポイントを段階ごとにまとめると、ざっとこんな感じだ。

フェーズ(1):人手不足

フェーズ(2):人手不足+無理な納期や目標を課せられた重圧

フェーズ(3):人手不足+無理な納期や目標を課せられた重圧+ビジネスモデルの破たん

 フェーズ(1)のころはまだ人手不足なので、上司によるパワハラや異物混入などの「現場の暴走」がメインだが、フェーズ(2)になってくると、そこに加えて無理な納期や営業目標を課せらるという「無理」がオンするので、現場はデータをいじったり、利益をかさ上げしたりというインチキに走る。

 このあたりでもかなりの問題組織だが、フェーズ(3)になるともっとヤバいことになる。現場のモラルが壊れかけているところへ、組織の根幹が壊れていくので、最後に残った「良心」まで吹っ飛んでしまうのだ。

 そうなるとどうなるかというと、「強者こそが正義」という「北斗の拳」的な無法地帯になる。つまり、カモられるほうが悪い、ダマされるほうが悪い、という半グレ組織のような弱者を食い物にした犯罪行為が横行していくのだ。

 それが19年に発覚したレオパレスの違法建築や、かんぽ生命の「高齢者詐欺」である。

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