クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

2019年デビューの良かったクルマ(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2020年01月01日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]
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ダイハツの新時代を開くタント

 7月9日にはダイハツからタントが発売された。現在の軽自動車は、各社ルーフの高さで3つのバリエーションをそろえるのが通例だ。ダイハツでいえばミラとそのバリエーションが最も背が低いモデルになる。真ん中に当たるのがハイトワゴンと呼ばれるムーブ。そしてそれを越えるスーパーハイトワゴンにあたるのがこのタントだ。子供を迎えに行って自転車を立てたまま積めることがうたい文句だ。この上に法規の限界まで車高を高くしたウェイクがあるが、これは各社が必ずしも持っているわけではない。

DNGA第一弾となるダイハツのタント

 タントはもうとにかく広い。運転席からフロントグラス越しに見える景色は電車かバスのようだ。開放感なら、並みのBセグメントでは全く太刀打ちできない。

 さてこのタント。ダイハツの大改革であるDNGAの記念すべき第一弾である。コモンアーキテクチャーを用いた一括企画によって、あらかじめモデルラインアップ全てのバリエーション要素を想定し、設計を固定する部位と可変にする部位を織り込んでいる。

 特にダイハツらしいのは、高齢者や体の不自由な人に向けた、介護・福祉的な機能を基礎設計に盛り込むことによって、これまで特殊車両として高価になりがちだった仕様を、ぐっとリーズナブルで使いやすいものにしたことだ。世の中の人々の暮らしを照らそうというダイハツの新スローガン、「Light you up」が見事に体現されていて、筆者はとても心を打たれた。

 走りはダイハツらしい穏やかなもので、「走る・曲がる・止まる」に原理的でありたい人には元よりお勧めしないが、日々使う便利な道具としてのクルマを求める人にはとても優しいクルマである。

 さて、後編は引き続き明日。取り上げるのは、9月17日発売のカローラ・シリーズと、10月24日発売のCX-30である。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。


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