クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

2019年デビューの良かったクルマ(後編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2020年01月02日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 恒例の新年企画は、1日と2日の連続で2019年に乗って良かったクルマについてだ。1日の前編では、デビュー順にトヨタRAV4、マツダMAZDA3、ダイハツのタントについて取り上げた。後編は、カローラとCX-30である。

カローラの大事な記憶

 新型カローラが登場したとき、さまざまな声があった。その中には「もうカローラという名前は止めた方がいいのではないか?」という声は、確かに少なくなかった。

 言いたいことは分かる。トヨタにそういう気持ちがあったかどうかは別として、今世紀に入ってから約20年。カローラは、自ら築き上げてきた名声をないがしろにするかのようなクルマ作りで、ブランドイメージを下げてきたと思う。

 だからいっそご破算にして、新しい名前で出直すというやり方もあったはずだし、トヨタの中でもずいぶん議論されたらしい。トヨタがそれをどう考えて、カローラという名前を存続させたのか? ひとまず昨年7月に行われた発表会での豊田章男社長のスピーチを読んでみてもらいたい。

19年7月、カローラ発表会での豊田章男社長のスピーチ

 「カローラといえば大衆車」という言葉が頭に浮かぶ方も多いかと思います。私もこの言葉がとっさに頭に浮かびました。ただ自分の乗っているクルマが大衆車といわれると、あまり嬉しくないのも現実です。しかし言い換えれば、私どもトヨタにとっては、多くのお客様に選んでいただいたクルマということだとも思います。街で見る多くのカローラに、お客さまやそのご家族の大切な思い出やストーリーが乗っているんだと思うと、本当に大切な車名だなと改めて思います。

 私にも思い出の1台があります。初めて自分のお金で買ったクルマがカローラでした。カローラ最後のFR車、羊の皮を被った狼といわれた1600GTでした。忘れられない青春時代の思い出が詰まったクルマです。カローラはそんな誰かのストーリーになるクルマだと思います。そんな多くの方に愛されるクルマだからこそ、絶対にコモディティといわれるような存在にしたくないというのが、私のカローラへの想いです。開発陣にもずっとそう伝えて参りました、カローラが誕生し、53年。12代目を迎えました。お客さまひとりひとりのストーリーをこれからも紡(つむ)いでいけるクルマとして、お客様が”何か良い”と少し自慢したくなる、そんなクルマを目指して参りました。

 このスピーチでカローラのイメージ問題の全て解決するとは筆者も思わない。「とはいえ拭い去りがたいイメージがあるじゃないか」とも思う。ただトヨタにどういう想いがあってカローラという名前を存続させたのかは理解できる。

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