「ほら、日本ってめちゃくちゃでしょ」 ゴーン氏の逆襲をナメてはいけないスピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2020年01月07日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

ゴーン氏の”ジャパンバッシング”

 ご存じのように現在、日本で働きたいとやってくる外国人実習生が年間9000人以上も消息不明になっている。では、これらがみんな「不良外国人」なのかというとそんなことはなく、日本人ならば労基に駆け込むような低賃金や過重労働に音を上げて失踪しているケースも少なくない。

 事実、法務省の平成28年度の調査によれば、日本で就労経験のある外国人2788人に職場での外国人差別について尋ねたところ、トップの「外国人であることを理由に就職を断られた」(25%)に次いで多かったのは、「同じ仕事をしているのに、賃金が日本人より低かった」(19.6%)となっている。こういう日本への不満は、祖国へ戻った人などのクチコミでじわじわ広がっている。それがゴーン氏の”ジャパンバッシング”で一気に火がつく恐れがあるのだ。

職場で不満を感じている外国人は多い(出典:法務省)

 そこに加えて、今年はもうひとつ不安要素がある。それは、「五輪」である。北京五輪の直前、チベットの人権問題が炎上したように「国威発揚イベント」の前には、必ずその国家のシステムに不満を抱くマイノリティからの「反撃」があるものなのだ。

 在留外国人は右肩上がりで増えていて、現在は282万人と過去最多となっているにもかかわらず、日本人と比べるとさまざまな権利が制限され、外国人の子どもなどは陰湿な差別やイジメを受けている。改正出入国管理法の際の政治家や知識人の議論が分かりやすいが、日本人の多くは、外国人は「人手不足を補う労働力」としてしか見ていない。

 こういう奴隷的な扱いを受けてフラストレーションがたまっている外国人が、ゴーン氏のジャパンバッシングに合流する形で、国際社会に窮状を訴えるというシナリオもなくはないのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.