「ほら、日本ってめちゃくちゃでしょ」 ゴーン氏の逆襲をナメてはいけないスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2020年01月07日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

ブーメランがかえってくる

 では、このようにさまざまなリスクを引き起こす「ゴーンの逆襲」に我々はどう向き合うべきか。

 まず、事実として異なっていることはしっかりと否定して、日本として主張すべき点もしっかりと国際社会に訴えていくことは言うまでもないが、本件において特に重要なのは、「ゴーン氏やレバノンに対して過度に攻撃的にならない」ということだ。

 「日本をコケにした犯罪者とヤツをかくまう国に気をつかうなどありえない。世界からナメられないためにも徹底的に糾弾すべきだろ」と怒りでどうにかなってしまいそうな方も多いと思うが、残念ながらレバノンやゴーン氏に対して激しい呪いの言葉を吐けば吐くほど、「ブーメラン」が美しい放物線を描いてこちらにかえってきてしまう。

ゴーン氏の“ジャパンバッシング”をナメてはいけない(出典:ロイター)

 我々も今のレバノンとそう変わらぬ形で、ゴーン氏と同様に国際手配された人物の引き渡しを拒んだ過去があるからだ。

 もうお分かりだろう、そう、アルベルト・フジモリ氏だ。日系2世のフジモリ氏はペルー共和国の大統領だったが、さまざま不正や虐殺事件の指揮などの疑惑が指摘されると、首脳会談にかこつけて国外脱出して日本へ身を寄せた。

 そこでペルー政府としては、フジモリ氏の身柄の引き渡しを求めたが、日本政府はけんもほろろに突き返した。なぜかというと、福田康夫官房長官(当時)が会見で述べた言葉が分かりやすい。

 「一般論としていえば逃亡犯罪人引渡法によると引き渡し条約に別段に定めがない限り、日本国民は引き渡してはならないことになっている。(フジモリ氏は日本)国籍を有する」(朝日新聞 2001年3月2日)

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