「均等」とは、一言でいえば「差別的取り扱いの禁止」のこと。国籍、信条、性別、年齢、障害などの属性の違いを賃金格差(処遇含む)に結び付けることは許されません。仮に行われたとすれば、労働者は損害賠償を求めることが可能です。
一方、「均衡」は、文字通り「バランス」。「処遇の違いが合理的な程度及び範囲にとどまればいい」とし、「年齢が上」「責任がある」「経験がある」「異動がある」「転勤がある」といった理由を付すれば、違いがあって当然と解釈できます。
均等の主語は「差別を受けている人」ですが、均衡は「職場」。「均等」では、差別を受けている人(=処遇の低い方)を高い方に合わせるのが目的ですが、「均衡」では低い方に高い方を合わせても問題ありません。
そもそも50年以上前の1951年に、ILO(国際労働機関)では「同一価値労働同一賃金」を最も重要な原則として、第100号条約を採択しました。この根幹をなすのは「均等」です。職種が異なる場合であっても、労働の質が同等であれば、同一の賃金水準を適用するとし、一切の差別を禁止しました。
そのILOが、日本政府に対し、8回にもわたり同一労働同一賃金の勧告をしていることはあまり知られていません。
また、経済協力開発機構(OECD)も、2008年に「Japan could do more to help young people find stable jobs(日本は若者が安定した仕事につけるよう、もっとやれることがある)」と題した報告書の中で、「正規・非正規間の保護のギャップを埋めて、賃金や手当の格差を是正せよ。すなわち、有期、パート、派遣労働者の雇用保護と社会保障適用を強化するとともに、正規雇用の雇用保護を緩和せよ」と勧告を行っています。
そういった外圧も影響し、政府は「同一労働同一賃金」を進めているわけですが、「均衡」という姑息な言葉に最初から最後までこだわり続けました。
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