赤字に苦しんできたダイエーに“復活”の兆し 流通帝国の崩壊から黒字化までの道のりをたどる長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)

» 2020年01月15日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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ダイエーは「解」にたどり着くか

 ところで、ダイエーの店舗に行くと、イメージキャラクターの「モッくんファミリーのうた」という音楽が流れている。「モッくん、モッくん」と連呼する歌詞がやたらと耳に残り、よく知らない人だと「モグモグ」と聞こえるので、「グルメをアピールしているのかな?」と思えてくる。

 もともと「モッくん」は「木曜の市」セールを宣伝するキャラクターだった。しかし、現在は日曜日にイオンカードで支払うとポイント10倍になるなど、ポイント還元に力を入れている。電子マネーで支払うと毎月5、15、25日がポイント2倍になったりと、幾つかの企画が混在していて分かりにくい。

 あれだけ「モッくん」を連呼し続けるなら、木曜の市に再度、集中してもらいたいものだ。

ダイエーのモッくんファミリーのうた(出所:ダイエー公式WEbサイト)

 「ダイエーには買いたいものがない」や「GMSには買いたいものがない」と言われてきた。

 サンフランシスコでは年収1400万円の4人家族は低所得者に分類されるという。日本の世帯年収で1000万円を超えるのは全体の10%程度だ。世界で最も豊かだったはずの日本の高所得者の大半が、気付けばサンフランシスコの低所得になってしまった。米国をベンチマークして、もっと安くていいものを売ってくれと求めても、企業努力には限界がある。

 晩年、中内氏は「顧客が見えなくなった」と語っていたそうだ。老いもあるが、米国と差が付き、日本がどんどん貧しくなっていく過程で、どういう商品を出せばいいか、分からなくなったのだろうか。

 イオンフードスタイルのコンセプトが分かりにくく、多くの店舗で建て替えも必要だが、ダイエーはやっとその解にたどり着こうとしているのかもしれない。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。


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